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冬の夜のおとぎ話
「古代ケルトの時代からこの地では『バルティナ』と呼ばれる春の祭りが行われていたんだ。この祭りの前夜は『ヴァルプルギスの夜』と言ってね、魔女たちがサバトと称する集会を開くと言い伝えられているんだよ」
厳しい冬の間、人々は雪に閉ざされた家の中で春の祭りに思いを馳せた。
「いいかいお前たち、よくお聞き。4月30日の日没から5月1日の日の出までは、決してブロッケン山に入っちゃいけない。山では魔女たちがお祭りをして、春の到来を待っているんだ」
村の子どもたちは代々、暖炉の前で母や祖母からそう言い聞かされて育った。
「魔女のお祭り? なんだか楽しそう!」
もしもそう言って目を輝かせる子供がいれば、母も祖母も声を落としてたしなめた。
「山に近づいた者は魔女に魔法をかけられて一生こき使われちまうんだ。だから『ヴァルプルギスの夜』にはブロッケン山に入っちゃいけない。いいね?」
神妙な大人たちの語りに、子どもたちは慌てて手で口を抑えるとコクリと頷いたものだった。
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