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魔女の攻撃で、板張りの小屋はあっという間に穴だらけになった。
「ちょこまかと、うっとおしいネズミだね! ゆるさないよ!」
「しまった!」
レンガ造りの暖炉が設置された壁際にギルベルトは追い詰められていた。
「ヒッヒッもう逃げられないね!」
魔女が杖を振り上げたその時、魔女の背後で大きなガラスの破裂音とともに滝のような水音が轟いた。
「なっ!」
目を釣り上げて振り向いた魔女の視線の先では、シャルロッテが水晶玉を床に叩きつけていた。
「お、お前……なんてことをしてくれたんだい!!」
真っ赤になって喚く魔女の後ろで、今度はギルベルトが杖をかざした。
「ここに呪術の失敗を宣言する! 果たされなかった呪いは『術者キトカ』に還れ!」
「ギャアァァァッ!」
突如湧き出した濁流の中から無数のルサールカたちの手が伸び、あっという間に魔女の体を水の中へとさらっていった。
「終わった……」
腰が抜けてその場にへたり込んだシャルロッテに、傷だらけのギルベルトはそっと手を差し伸べた。
「僕の名前はギルベルト。僕に君の名前を尋ねることをゆるしてくれるかな?」
「ええ、ゆるします」
シャルロッテはにっこり笑って差し出された手を取った。
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