五月祭

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真っ赤な顔で広場から走り去ったエラを、シャルロッテは慌てて追いかけた。 「エラ!」 4つ違いの妹の名を呼べば、エラはポプラ並木の中程で足を止めて振り向いた。 「リボンがないと……またビアンカに笑われるわ。貧乏人が背伸びして天の花嫁のフリをしてるって……」 大牧場の娘ビアンカがエラを妬んで意地悪していたことにはシャルロッテも薄々感づいていた。泣きじゃくる妹の肩にそっと手をおいて、シャルロッテは優しく声をかけた。 「泣かないで、エラ。私がリボンを探してくるわ。泣いて目が腫れたりしたら、せっかくの天の花嫁が台無しよ」 「でも……」 エラは驚いて大きな目を見開くとシャルロッテの顔を見上げた。 「大丈夫、ブロッケン山へは一本道だもの。きっとどこかに落ちているわ」 「でも今夜は『ヴァルプルギスの夜』よ?」 「日が暮れる前に戻ってくれば大丈夫!」 震えるエラをなんとかなだめ、シャルロッテは村から続く一本道を辿ってブロッケン山へと向かった。
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