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浮気じゃない
「俺たち、もう別れよう」
そう言ったときの彼女の顔は、文字通り顔面蒼白といったものだった。俺の言葉に何も返さず、ただ唇を噛みしめて下を向いている。
……ったく、こんなとこが嫌なんだよ。
最初は大人しくて従順なところがいいなと思った。だけど付き合っていくうちに、そんなところは『退屈でつまらない』の言い換えだと気が付いた。何が食べたいかと聞いても、返ってくるのは『何でもいいよ』『ハルくんの食べたいものでいいよ』ばかり。やっぱり、ちょっと我がままで俺のことを振り回すような子が好みだなと再確認した。
つまりは、俺が玲香と付き合うようになったのも必然のようなものだ。ただ、それと別れ話の順番が逆になっただけで、これは浮気や二股なんかじゃない。
俺の気持ちはもう葉月にはこれっぽっちも残ってやしないのだから。
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