恋人だった

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恋人だった

「俺たち、もう別れよう」    今日もいつもと同じ、幸せなデートだと思っていた。  ううん、本当はそんなことない。そう思いたかっただけ。いつ、こう言われるかと毎日苦しかった。    最近のハルくんは、わたしと会っていてもいつも苛々としていたから。会いたいと言うのはいつもわたしからだったから。  だから五日前、冷たくなっていくハルくんに焦って、わたしはこっそりと大学へ様子を見に行った。    気のせいだよね? ハルくんは、わたしの彼氏だもの。ほかの女と仲良くなんてしてないよね?    そう信じたくて行ったのに、そこで見たのはそれとは真逆の光景だった。  明るい茶色の髪をしたハルくんは遠くからでもとても目立つから、すぐにその姿は見付かった。    ハルくん、いた。    ほっとしたのと姿が見れて嬉しいのと、半々の気持ちで息をつく。だけどその直後だった。   「ハルーッ」    高い声を上げ、髪の長い女がハルくんに駆け寄って行った。背後から近寄ると、その勢いのままに彼の腕に自分の腕を絡める。    何、してるの? ハルくん……、ハルくんも迷惑だよね? ねぇ早く、その女を振りほどいてよ。ねぇ、どうしてそんなに笑ってるの? どうしてその手、振りほどいてくれないの? どうして……、キスなんてしてるの?    わたしが後ろから見ていることにも気付かずに、ふたりは腕を組んだまま校舎の中へと去って行った。その後ろ姿はまるで仲の良い恋人同士そのもの。ハルくんの恋人はわたしなのに。わたしはここにいるのに。
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