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あなたの好きなコーヒー
カラン、と氷の溶ける音がする。ハルくんの好きな濃いめのコーヒーに氷をたっぷりと入れて、混ぜる、混ぜる。
『別れよう』と言われた後に、それでもわたしはどうしても別れたくなくて、少しだけでもいいから話がしたいと縋るようにお願いした。顔を歪めながら面倒くさそうに『少しだけな』と言うハルくんに、わたしはキッチンに走った。いつも、わたしの淹れるコーヒーは美味しいって言ってくれてたもの。コーヒー淹れるって言ったらきっと待ってくれると思ってた。だってね、ハルくん。わたし、あなたがコーヒーが好きだって知ってたから、高いコーヒー豆を用意してたんだよ。普段は紅茶派だから美味しい淹れ方も分からなくて、ネットで勉強したの。
でもね、今日のコーヒーはいつもとちょっとだけ違うんだ。濃いめだから気が付かないかも知れないね。ううん、気付かれないように、しっかり混ぜなきゃね。ハルくん、美味しいって言ってくれるかな。
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