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わたしの幸せ
「や、やめ、葉月っ。止めてくれっ。俺が悪かった。別れるなんてもう言わないから、た、頼むっ」
必死で頼み、逃げようとするも、やっぱり手足に巻かれた紐は緩みすらしない。
どうすればいい。このままだと本当に……、殺される――。
「別れるってずっとその言葉を聞くのが怖かった。夜も眠れないくらいに。だけど今は不思議。もう怖くなんてない。別れるって言ったことは赦してあげる。でもね、わたしから離れるなんて、許さない。わたし、幸せだよ。だってこれからはずっと一緒だもん」
それが本心だと葉月の表情が教えてくれる。同時に逃げられない恐怖が押し寄せてきて、俺は葉月から目を離せないままに息を呑んだ。
「本当だよ? ハルくんのこと大好きだから、今はとても幸せ。だから、ゆっくり楽しもうね?」
もう何も言えずにいる俺の目に、葉月の笑みと刃の光が映った。
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