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曰く付き、その1。お姫様のお人形
これはまだ妖怪と付喪神が身近にいた時代。世は華の江戸といったところか。戦は終わり皆の生活が笑顔と活気に満ち溢れだしたころ。江戸の長屋の一角に奇妙な看板が立ったのだ。
「銀次、何だこの看板は」
「こりゃあ、また変わった仕事だねえ」
俺が建てた看板を見て通りがかりの近所の皆が目を丸くして凝視している。
「ん?」
俺は後頭部を掻きながら出来上がった看板板をべしべし叩く。この看板板は友人の太郎が用意してくれて、寺子屋の先生にお願いしてもらい、書いてもらったんだ。
「曰く付きの品、引き受けます。お礼はうまい飯でってなんじゃそりゃあ」
隣の旅人風情のおっちゃんが呆けた顔をしたまま俺を見るので俺は説明をしようとするとおしゃべり大好きな近所連中が我が我がと説明をしだした。
「この銀次。実はちょっと有名な陰陽師の息子なんだ」
「へえ。だが、なぜこの大江戸の長屋住まいなんだい?陰陽師様のご子息がここに住むのかね。京のほうの陰陽師は立派な屋敷に住んでいらっしゃっていたが」
旅人は顎髭を撫でながら俺を訝しげに見る。絶対、信じていないな、このおっちゃん。まあ仕方ないけどさ。
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