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仕事帰りにお気に入りのカフェに寄って夕食をとる。
もちろん自炊することもあるけれど、一人暮らしで料理もあまり得意ではない茜は、好きなときに好きなだけ外食ができる悠々自適な生活を送っていた。
しかも彼氏と別れてから早二年、お一人様生活満喫中の身だ。
もともとこのカフェには月に何度か通っているほど気に入っていて、店長とも顔なじみになっている。
ゆったりとした店内はオルゴール調のBGMがかかり、観葉植物が目を潤わせる。挽きたての珈琲の香りも心落ち着かせ、食事もなかなかに美味しい。
訪れるのはだいたい夜で、残業をしなかった日。
カフェの営業時間が二十時までのため、食事をしてゆったりと珈琲をいただき、日記を書くのがいつものスタイル。
浩輝と話をするようになってからは、カフェに通う頻度が少しばかり増えたように思う。
カフェに行く目的がだんだんと『浩輝』に変わってきたような錯覚を覚え、茜は自虐的に笑った。
確かに浩輝とのおしゃべりは楽しいし、彼のことをもっと知りたい気持ちもある気がする。
けれどそれを認めてしまったら、まるで浩輝のことを意識しているようで心が落ち着かなくなる。
(……そんなんじゃないもの)
そう、そんなんじゃないのだ。
六歳も年下の男の子なのだから、弟みたいで可愛いと思うだけであって、頑張ってアルバイトしてる姿が微笑ましく見えているだけ。
自分も学生の時はこんな風だったかな、と思い出したりして。
月に数回通っていたのがいつの間にか週一回になっていたとき、茜は再び疑問に思った。
自分はカフェが好きで来ているのか、はたまた浩輝に会いに来ているのか、と。
カフェの料理は本当に美味しく、オムライスが有名だけれどシェフの気まぐれ料理もこれまた絶品。野菜もふんだんに使われていて栄養バランスもいい。長居をしても嫌な顔をされないし、接客もなかなかのもの。
そういうところが気に入って贔屓にしているお店なのだけど。
(今日は浩輝くんシフト入っているのかしら)
なんてことを考えている自分がいてザワリと胸が騒ぐ。
(違う違う。別にいてもいなくてもいいんだから)
そう思うのに、実際に浩輝がいない日に訪れると妙にガッカリした気分になるのはなぜなのだろうか。
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