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◇
その日は午後から天気が悪く、今にも雨が降りそうな空模様。
こんな日は残業などせず定時でさっさと帰りたい。
茜は仕事をできる限り調節し定時の十八時で仕事を終えた。
外に出ればポツリポツリと雨が降り出したところ。
最寄り駅までは徒歩五分という近い距離。
足を踏み出したはいいけれど、すぐに雨粒は大きくなった。
「やばっ」
最近ではゲリラ豪雨も頻繁に発生する。
それでも駅まで走れば何のことはない、もう、すぐそこなのだからと走り出した矢先。
ピカッと目の前が光ってドーンと雷が鳴った。
茜は体を強張らせ、すぐさま通りにある本屋に入っていく。
(なんで今雷が鳴るのよ)
ドキドキと早くなる鼓動を必死に抑えるが、外はあっという間に激しい雷雨になっていた。
スマホで雨雲レーダーを確認すれば、雨雲は三十分ほどで一旦は通り抜けていくらしい。
「はぁー」
茜は深いため息をつくと、店内をウロウロとし始めた。
傘は持っているから、雨だけなら別にゲリラ豪雨だろうが関係なく駅まで走ったものを、雷は無理だ。茜は雷が苦手なのだから。
鳴り止むまでしばらくここで時間を潰すしかない。
話題の小説を手に取りながら、最近ゆっくり読書などしていなかったなとぼんやり考えていると、「茜さん?」と声を掛けられその声色に心臓がドキリと跳ねた。
「……浩輝くん」
「わあ、こんなところで茜さんと会えるなんて」
「本当、奇遇……っ!」
浩輝の後ろのガラスが一面ピカッと光り、茜は思わず目を閉じた。
直後にドーンっと大きな地響きのような音が鳴り響く。
「びっくりしたー。……って茜さん、大丈夫?」
「……」
「……もしかして雷苦手な人?」
「……」
空は未だピカピカと怪しい光を放つ。
雨雲がちょうど真上を通過しているのかもしれない。
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