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季節が夏から秋に変わり、茹だるような酷暑が和らいできた頃、アフリカから帰国した100人ほどのクルーズ船旅行者をきっかけに、タナベマサキウイルスは全世界で爆発的に広まった。
インフルエンザのおよそ20倍の致死率と、強い感染力を持つそのウイルスは、ヨーロッパ、北米、中東そしてアジア各国で猛威を振るい、犠牲者を量産し続けた。
「We must unite to eradicate Tanabemasaki!(タナベマサキ撲滅の為に我々は団結しなければならない)」
WHOの事務総長は全世界に向け、力を込めてそう発信した。
日本でも「タナベマサキ対策本部」が設置され、飲食店には「タナベマサキの蔓延を防止するためマスクを着用しましょう。」と張り紙がされた。
ニュースは連日タナベマサキの猛威を報道し、「タナベマサキの疑いのある方は外出を控えてください」と視聴者に呼びかけていた。
アイハラの上司であるモリ博士も、コメンテーターとして今やTVに引っ張りだこだ。
「タナベマサキについて、先生どうお考えでしょうか?」
「やはりですねー、致死率も感染力も強い病気ですから、これを如何に抑え込むかが大事なわけです。タナベマサキ撲滅のために、今こそ国民が一丸とならなければなりません。」
タナベマサキ撲滅のために……今や日本中が、いや世界中が動いている……
上司の出演するTVを観ていたアイハラは、それからおよそ数十分に渡って笑い転げた。
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