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私がシャワーを浴び終えて部屋に戻ると、
「真湖ちゃん。けっこう色っぽいね」
バスタオルを巻いただけの私の姿を一瞥すると、一夜はすれ違うようにバスルームの方へと消えた。
私、本気で今から…。
既に、酔いは覚めていて、意識はしっかりとしている。
ベッドに腰を下ろし、俯くと。
なんだか、ちょっと泣けて来る。
私、自暴自棄になっているんだな、って。
昌也の事がとてもショックで…。
私だって、浮気してやろう、って。
加賀見一夜は、昌也にとったら天敵みたいな相手で。
当て付けに浮気する相手としては、
申し分ない。
暫くすると、一夜が戻って来た。
腰にバスタオルを巻き、こちらへと来る。
その鍛えられた逞しい上半身に、少し見惚れてしまう。
私の横に座るのかと思いきや、ベッドに膝で乗り、
ベッドボードのパネルで照明を落として行く。
その背に描かれた、金色の獅子。
ライオンの刺青。
その刺青も、部屋が暗くなると、ぼんやりと浮かび上がるように見える。
「真湖ちゃんって、今までこうやってノリでしちゃったりとかあるの?」
「え?」
ノリ…。
そうか。この人とこうなっているのは、ノリなのか?
「ううん。私はちゃんと付き合った人としかした事ない。
と言うか、昌也以外ない」
私は付き合う事から始まり、全ての初めてが昌也。
そして、今も全て昌也だけ。
いや、さっきこの人にキスされていたから、キスはこの人とも。
「やっぱ辞めとく?
この先、本当に真湖ちゃんの事を大切に思ってくれる男と付き合った時、
俺との今夜の事思い出して、後悔するよ?」
今、後悔しないと思うのは、昌也が私を大切にしてないと、私も思っているから。
「だって、私、昌也とは別れない」
だから、そうやって後悔する日なんて来ない。
「真湖ちゃん、頑固だね」
一夜は私の方へと少し移動すると、
肩に手を回して、私を引き寄せて来る。
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