2人の誕生日

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「聖王会の会長ともあろう人が、 一人でこんな風に出歩いて、何してるんですか? 危ないですよ?」 誰かに命を狙われていても、おかしくない人。 常に誰かが、ボディガードに付いているはず。 「だから変装してんの」 そう言って、再び眼鏡を掛けた。 この眼鏡は、変装なのか。 「時々、こっそりと、ね。 常におっさんらに囲まれてて、けっこう息苦しいから。 息抜き」 そう言われ、この人の写真を思い出すが。 屈強そうなスーツ姿の男性達にサイドを囲まれていた。 この人自体もスーツ姿で、今は下ろしている前髪も、後ろに流していた。 この人、こうやって近くで見ても本当に若く見えるけど、 年齢は確か、33~34歳くらいだったはず。 それでも、あんな大きな暴力団の組の会長になるには、あまりにも若い。 この人の母親側の祖父の、及川竜三(おいかわりゅうぞう)が、 伝説と迄言われている、聖王会の初代の会長だったから、だろうか? この人の父親は堅気で、建設会社を経営しているらしいが…。 「私、あなたの事は色々と知ってる…」 知ってるけど、こうやって会うのは初めてで。 なんだが、芸能人にでも会ったような感覚。 「そう。警察官の彼氏から、色々俺の事聞いてる? あ、もしかしたら、真湖ちゃんの彼氏、俺知ってるかな? K署の組対の誰?」 「本堂昌也…」 そう言った後、名前言って大丈夫だったかな?と不安になる。 「んー、誰?それ? そんな雑魚知らないな」 昌也の名前を知らなくて安堵するよりも、 そうやって昌也を馬鹿にされた事に腹が立つ。 「じゃあ、今夜はその警察官の彼氏とデートだった?」 「いえ…」 そう否定しなくても、この人は私の答えを分かっている。 そんな顔をしている。 「その真湖ちゃんの彼氏は、彼女の誕生日も祝ってくれないような人なんだ?」 「違う! 本当はデートの約束してたけど、 急に仕事になって」 警察官の彼は、とても忙しい人。 こうやって、仕事のせいで会う約束をドタキャンされる事も、今まで何度かあった。
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