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「俺と賭けない?」
「賭け?」
「そう。
その真湖ちゃんの彼氏が、俺の言うように家で浮気してたら、また真湖ちゃんはこのホテルに戻って来て」
「えっ…」
それって、そういう意味?
此処はラブホテルだから…。
「もし、真湖ちゃんの彼氏が本当に今夜は仕事で居ないのならば、
そのまま真湖ちゃんは自分のお家に帰ればいいよ」
「…」
え、どうしよう、と思ってしまう。
そんな、賭け…。
「あ、その彼の家迄のタクシー代は俺が出す。
そろそろ、電車なくなるから」
「それは大丈夫。いらない」
「遠慮しなくていいよ?」
「遠慮じゃなくて。
彼の住んでるマンション、この辺りから歩いてすぐだから。
彼の部屋寄って駅に行っても、多分、終電には間に合うと思う」
このラブホテルが、私がこの人に拾われた場所から離れてなければ。
「あ、確かに、彼の勤め先のK署も、このS町の歓楽街の近くだね。
ってか、この辺りの管轄。
なら、真湖ちゃんの彼、名前は知らないけど、顔くらいは俺知ってるかもね?」
そう、この人は言うけど、
昌也の方はこの人の事をとても知っていて。
いつか挙げてやる、と言っていた。
「この辺り物騒だから、気を付けてね?」
そう送り出すような言葉をかけられ、
もう、そんな賭けしないなんて言えない。
加賀見一夜の言うように、この辺りのS町は大きな歓楽街で、ちょっと物騒で。
女が一人でふらっと飲みに行くような場所じゃない。
今夜は、誕生日なのにデートをドタキャンされた事のやけ酒だけど。
もし、昌也の仕事が早く終わって、
今から会えないか?と言われた時に、この辺りに居たら、すぐに駆け付けられると思ったから。
だから、S町の歓楽街のバーで一人で飲んでいた。
でも、時間も遅くなり流石にもう帰ろう、と店を出た所で、この人と…。
きっと、この加賀見一夜も、そんな私の思惑に気付いてそうだけど。
そこまで意地悪じゃないのか、それは言わない。
けど、思ってそうだけど。
馬鹿な女だな、って。
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