13話

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13話

  俺は翌日に親父ー国王の執務室に行った。 報告をするためだ。スズコ様もお袋に報告しに行くと言っていたが。 さて、執務室に着くと早速中に入る。親父はいつも通り執務をしながら俺に目線を寄越した。 「……エリック。今日はどうした。何事かあったのか?」 「はい。その。スフィア侯爵と第二妃様の事でお知らせしたいと思ったんですが」 「ふむ。わたしに知らせたい事とは何だ?」 俺は息を吸った。 「……スフィア侯爵が税を不当に徴収していたとか。そうして余った分を自分の懐に収めていたとその。ジュリアスが教えてくれました」 「成る程。それは一大事だな。で、わたしに報告しようと思ってこちらに来たのか」 「そうです。第二妃様が第三妃様に嫌がらせを行っていたとも聞きました。以前にもラウル叔父上が刺客に狙われた事があったでしょう。それにも侯爵と第二妃様が関わっているようです。俺は騎士団長に頼んで叔父上と俺の護衛を増やしてもらいましたが」 それを言うと親父はペンを置いてこちらを見た。 「……そういえば、騎士団長からエリックとラウルの護衛を増やしたいと言われたな。お前が自分で団長に言いに行ったのかな?」 「ええ。そうでもしないと叔父上を助けられませんし。俺も自分の命が大事ですから」 「ふう。お前、全然子供らしくないな。前は王妃の側にくっついて離れないくらい、甘えただったのにな。いつの間にそんなに切れ者になったんだか」 言外に「父ちゃん寂しいぞ」と言いたげな表情で親父は黄昏れた。話が脱線してるぞ。 「父上。俺に親父と呼ばれても怒りませんか?」 「……いきなりどうした。何でわたしが親父呼ばわり??」 「俺は父上の事は親父と内心では呼んでいました。おっさんの方がいいですかね」 親父はそう言った途端、わなわなと震えた。 「……エリック。お前な、わたしはまだ23だぞ。何が悲しくって息子からおっさん呼ばわりされなきゃならん。わかった、親父でいいから。おっさんはやめろ」 「わかりました。じゃあ、親父。まずさくさくと第二妃の悪事の証拠を見つけろや。後、スフィア侯爵を泳がせて様子を見るくらいはできるだろ。浮気をするのも大概にしろよ。王妃であるお袋がかんかんになって怒ってんぞ」 「……エリック。お前……」 親父は息子からの口撃に突っ伏した。ふん、今迄好き勝手やってきたんだからツケを支払うくらいは自分でやれや。 珍しく俺はやさぐれていた。あ、さすがに偉そうに言い過ぎたか。 「……わかったよ。やればいいんだろう、やれば」 親父は何故か回復していた。え、どうした?? 俺がぽかんとしていたら親父はがりがりと書類の山を再び片付け始めた。やる気になったらしい。 「エリック。また何かあったら言えよ。その代わり、無茶はすんなよ。わかったな?」 「……はい」 俺は頷くと親父の執務室を出た。 自室に戻りリアナに言ってオレンジの果実水を出させた。それを飲みながらふうと息をついた。 「……殿下。報告はいかがでした?」 「おや、父上は聞いてくれたよ。で、また何かあれば言えよと。無茶すんなよともいわれたな」 「そうでしたか。陛下は聞いてくださったんですね」 リアナはほっと胸を撫で下ろした。どうも相当、心配だったらしい。 「……その。リアナ、父上の事を親父呼ばわりしてしまってな。おかげで怒られた」 「……殿下。陛下の事を親父と呼んだんですか。その言葉、どこで覚えたんですか?」 あ、リアナの顔が怖い。笑っているが目が笑ってない。冷たくこちらを見据えているぞ。どうしよう。まずいな。 「……その。俺ってさ、前世の記憶があるんだよ。そいで前世の自分は平民の女性だったからな。それでつい、父上を親父呼ばわりしちまったというか」 自分からペラペラと喋ってしまった。余計にリアナが呆れ返るぞ。アホか俺は!! 冷や汗をかきながらリアナを見た。ぽかんと口を開けてしまっている。 「……殿下。あの。前世って。もしや転生者だったりするんでしょうか」 「あー。もうそうだよ。俺は異世界出身の転生者だ。で、前世は28歳の日本という国に住む女性でな。スズコ様とは同郷だよ」 「まあまあ。そうでしたの。確かにスズコ様も日本という国から来たとおっしゃっていました。殿下もそうだったんですね」 俺はこくりと頷いた。リアナは成る程と納得したらしい。そういや、リアナや侍女達には説明していなかったな。 仕方ないと俺は思い、リアナに侍女達にだけはスズコ様と俺が同郷で異世界からの転移者と転生者であると説明するように言っておいた。リアナは快諾したが。 その後、俺はオレンジの果実水を飲んでから夕食をとった。リアナと以前よりも打ち解けたような感じがする。 さて、ラウル襲撃事件も犯人が捕まるまで後少しだというし。俺ももっと頑張らないと。意気込みを新たに眠りについたーー。
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