14話

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14話

  ラウルと俺が襲撃される事件が起こってから、一か月が過ぎた。 あ、ちなみにジュリアスが説明してきたが。それによるとラウル襲撃事件の実行犯である刺客は仲間によって消されたときいたが。実は違っていたらしい。 刺客を探していた騎士が密かに発見して匿っていたというのだ。瀕死の状態でいた刺客を王宮の牢獄に連れていき、医師を急いで呼んだらしい。的確な処置のおかげで奴は一命を取り留めた。 騎士は刺客ー奴の看病をこっそり王宮のメイドに頼み込んでやらせた。薬を飲ませて食事を与え、牢獄のベットで寝させた。奴は少しずつ回復して騎士にひどく感謝したという。 その騎士は奴を人質に取り看病などをする代わりに情報をこちら側に教えるように言った。最初は口を割らなかったが。メイドが少しずつ聞き出すとぽつぽつと話し始める。 刺客である奴は名をクォンといい、とある暗殺者組織に所属するプロの殺し屋だった。が、ある時に貴族から暗殺の依頼が入った。 それがラウルを暗殺せよというものだった。クォンは別にその貴族に忠誠を誓っているわけではなく、金で雇われたと言っていたそうだが。 まあ、クォンは見かけだけで判断すると15か6くらいの少年だとジュリアスは言っていた。裏の業界では有名な殺し屋らしく二つ名を「紅の眼の殺戮者」と言うらしい。何か、厨二病っぽい名付け方だが。 そして王宮に忍び込み、実行に移したが。俺がいち早く気づいたせいで失敗した。すぐに逃げたが追っ手に見つかり瀕死の重傷を負わされたとか。 これがクォンが話した事らしい。奴の証言から暗殺者組織を特定して潰し依頼した貴族の尻尾も掴んだ。依頼した貴族はスフィア侯爵だったそうで。侯爵は王太子の暗殺未遂と税金の無断押収の容疑で捕まり地下牢に入れられた。第二妃のフェリシア様も連座して同じく入れられた……。 事件から一か月が経ち、俺付きの護衛に何故かクォンが加わった。まだ、15歳らしいが凄腕の暗殺者らしかったのでジュリアスが引き抜いたらしい。 「……へえ。あんたがあのジュリアスの仕える王子様か。初めまして。俺はクォン。これからあんたを守るよ」 へらりと笑うと俺の頭を撫でた。何かめっちゃ慣れなれしいな。 「……あんたがクォンか。もっと凶暴そうな奴を想像してたよ」 クォンは濃い茶色の髪に真っ赤な瞳のほっそりとした小柄な少年だった。でもジュリアスによれば、相当な強さだと言っていた。 「はは。凶暴そうねえ。まあ、二つ名だけを聞いたらそういう風に思われる事が多いな」 「そうかよ。けど、クォン。俺に仕えていいのか?」 「何を言うかと思えば。俺は暗殺者組織からは狙われてるけど。ジュリアスがさ、国ぐるみで俺を保護するんだと。で王太子を守っていたらその組織からは守ってやるという契約を結んだわけ。陛下もなかなかお人好しだよな」 「……親父。何で息子や弟の命狙ってた奴を引っこ抜くんだよ。余計にややこしくなるだろうが」 「……王子?」 俺は頭を抱えた。普通、牢獄に打ち込むんじゃないのか。親父の考えがわからん。 「……あっ。クォン。こんな所にいたのか。そろそろ、他の奴らも来るから隠れておけ」 クォンの姿を見つけたジュリアスが静かに近づきながら言った。クォンはそうだったとため息をついて庭園の木の枝に飛び移った。素早くその身を隠す。 「何か、すげえ奴が来たな」 「……凄腕ではあるんですが。いまひとつ、常識が通じないといいますか」 ジュリアスはため息混じりに言う。あいつの扱いには困っているようだ。 「ジュリ。あのクォンが「紅の眼の殺戮者」なのか」 「そうですよ。クォンは独特な眼の色をしているでしょう。髪の色と眼の色から察するに東方の島国にいるチェン族の出身でしょうね」 「チェン族?」 「チェン族は元々島国の北方にいた人々でシノビを生業にする一族だと聞きました。暗殺術にかけては手練の者が多いとか」 マジか。リアル忍者だろ、それ。クォンって確かに忍者っぽい格好をしていた。 「……チェン族って聞けば聞くほど凄い一族だな。忍びが異世界にいたとは」 「殿下??」 「何でもない。それよりジュリ。事件は解決したな」 俺が言うとジュリアスはそうですねと笑った。 「やっとフェリシア様の事が片付きました。ただ、ケビン殿下とシュリナ殿下はまだお小さいので。王妃陛下が陛下に懇願してご自身の実家で育てるとか。 ですから、王族籍からは離脱させたそうですが」 「……可哀想にとは思うな。後で2人の好きな絵本やお菓子を贈ろう。リアナにも言っておく」 「……わかりました」 ジュリアスは頷いた。俺も目から流れる涙をぐいっと袖で拭いた。男なんだから泣かないぞ! 俺は自室に戻る。3歳児にとっては過酷で重い現実だが。受け止めて前に進むしかない。リアナに言ってケビンとシュリナに絵本とお菓子、花束を用意するように言いつけた。後で2人にこっそり贈ったのだった。
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