目的の為に、でも判らないからこその理由。

1/1
前へ
/35ページ
次へ

目的の為に、でも判らないからこその理由。

ゼスと、皆と。 無事に合流も出来たけれど… ずっと何も食べてなかった事もあって… 私は歩けなかった。 皆の前でゼスは微妙な顔で言った。 「やっぱりか!? たった3日、見ただけでも判ったが… 良いかぁ? まずは体力も重要!! ユアナに俺が教えるのも忘れてた事だがなぁ? 勿論、学ぶ事すら重要でも… だが、何をするにもだ!! 体力がねぇと何も出来ん!! 後は根性かぁ? ん? それはユアナにと…?」 私も素直に言う。 「ごめんなさい、ゼス。 それと… 根性は… どこを頑張るの?」 でもゼスは微妙な顔のままで言う。 「ユアナ? やっぱり根性は要らん… とにかく体力だな?」 側に居た皆がだった。 急に笑い出した。 「あはははは!! ヤベェ… あの首領(しゅりょう)が…」 「首領(しゅりょう)!! 俺らは判るぜぇ!? だけどなぁ!! 根性なら首領(しゅりょう)がかぁ?」 「首領(しゅりょう)が… ユアナの親っぽい… あはははは!!」 「ユアナよりも根性は首領(しゅりょう)なぁ!! 俺らも、それ必須かぁ?」 「もう首領(しゅりょう)が負けてねぇかぁ? あははははっ!!」 皆に向かってゼスは怒鳴った。 「うっせぇぞ、こらぁ!! お前らも充分、既に判んだろうがぁ!! こんの仮入団馬鹿をだぞぉ!! 判ってて言ってんだろ!! 俺からしたら、お前ら馬鹿共全員込みだぁ!!」 また皆が笑った。 それが私も嬉しくて笑う。 ふとゼスに言われた事も思い出す。 『俺にと言った目的を忘れんじゃねぇぞ』 そうだと。 私は納得もする。 本当に思える事だった。 私は愛する人を探す為にと!! だから、もっと頑張らないと!! でも… まだ私には判らない? どうやって愛してると判るの? ************************** 数日後。 あれから食事もして私は安静にしてた。 それから今は問題なく動ける様になった。 今度は森の様にも見える? どこかの山だとは思うけれど? そこでも洞窟の様な場所や広場の様な場所もある。 でも国すら私には判らない。 帝国以外にも各国を… 私も勉強してたのに? こんな場所は本にも書いてなかったと思う。 でも… ゼス達は盗賊… 隠れ家みたいなもの? もう今なら私も皆と一緒に食事も食べられる。 そんな私は考えながら広場に居る皆を見る。 皆が男性。 これは聞く事かも判らない? いつも… お兄様達が居たから… どうすれば判る? 私が考えてると… 「ユアナ? 食事が止まってるが… もっと食わねぇと体力すら無理だぞぉ。」 側に居たゼスを見ると微妙な顔をしてた。 「はい!! ちゃんと食べます!!」 焦りながらも、すぐに私は返事をする。 食事をと少し食べてる時。 ふと気になった。 ゼスは? ゼスにも? それに… いつもゼスは何でも知ってる? ゼスは必ず教えてくれる? これもゼスなら判るの? それから私はゼスを見ると… ゼスも普通に食べてた。 少し考えながらゼスの側にと近付く。 「あの、ゼス? いつも判らない事は聞いて覚えろって… だからゼスなら…」 私は言うのを途中で止めて考える。 やっぱり… 聞く事すら判らない? ゼスが普通に食事をしながらも言ってきた。 「ん? 何か気になる事でもあったかぁ?」 考えたけれど… 勇気を出してゼスを見ながらも聞いた。 「ゼスには愛する人が居ますか?」 その瞬間。 ゼスは食べてる物を吹き出した。 近くに居た皆も全員が同じ反応だった。 私は驚く。 更にゼスを見ると噎せてた。 「ゼ、ゼス? 大丈夫? あの… 聞いたら駄目だったの?」 そんなゼスは急に水を一気に飲んだ。 複雑な顔で私を見てから言った。 「いきなり… こんの仮入団馬鹿!! 俺すら喉が詰まっただろうがぁ!? もぅ… 俺を殺す気かぁ!? 新手だったぞ!?」 私は焦りながらも周りの皆を見ると… 皆すらも驚いた顔をしてた。 どうにか私はゼスを見ながら言う。 「えっと… そんなつもりじゃ… でも… ゼスなら判るのかと? だから参考にと?」 ゼスは微妙な顔で私に言った。 「参考にだと? まさか… 俺がユアナに目的をと言ったからかぁ? だが、急に聞いてきた理由は何だ?」 それにも、どうにか私も言う。 「あの… そんなにと? 難しい事だったの? 私の周りには、その… 誰も女性が居なかったけれど… ゼスは多分? 何でも知ってる? いつも教えてくれるでしょう?」 すぐにゼスは目を閉じて右手を口元に当てた。 考えてる時の? だから私はゼスを見ながら待ってると… 今度は急に首を振ってから微妙な顔で私を見た。 「理由は判ったが。 つまり、これは… ユアナは恋愛経験すら無しと。 それで俺にかよ? 他の皆には聞かねぇのかぁ?」 それを聞いて私は皆の方を見ると… 皆は急に首を横に振った。 すぐにゼスを指で示した。 私も意味は判った。 笑って頷いてから、またゼスを見るけれど… 焦る様にゼスは皆へと向いて大きく言った。 「お前らぁ!? 今、全員だっただろうがぁ!? 俺にとか!! どうにかしろって事かよ!? いや、待て!? 俺すら、こんなの…」 また私は不思議に思いながら皆を見る。 すぐに数人が大きく言ってきた。 「ユアナ!! これは首領(しゅりょう)だけだぞぉ!? だから首領(しゅりょう)に聞くんだ!!」 「首領(しゅりょう)なら知ってるぞ? だからユアナは、そうな!? 首領(しゅりょう)に聞くのが一番だし!!」 「大丈夫だ、ユアナ!? 首領(しゅりょう)なら判る!! だから首領(しゅりょう)を良く見ろ?」 「そうだな、首領(しゅりょう)はモテる!! 恋愛経験すら豊富だぞ!?」 「安心しろ、首領(しゅりょう)なら出来る!! 俺らは馬鹿だからなぁ?」 「ユアナには… そう、まず首領(しゅりょう)にだろ!?」 皆にと私は笑って言う。 「うん!! 判った!!」 でも私がゼスを見てると慌て出した。 すぐにと、またゼスは皆に大きく言った。 「待て待て待てぇ!? お前らが楽しんでるだけだろ!? しかも… 余計な事まで言うんじゃねぇよ!? マジで言ってねぇだろうがぁ!!」 それにも皆がだった。 すぐ大きく言ってきた。 「首領(しゅりょう)!! 俺は馬鹿だから無理だぁ!!」 「教育担当は首領(しゅりょう)です!! そこんとこは全部、頼んます!!」 「大丈夫だ、首領(しゅりょう)なら? 頑張ってくれ、俺も無理だぁ!!」 「もう首領(しゅりょう)しか居ねぇ? 俺も経験ねぇから判んねぇし!?」 「これは首領(しゅりょう)しか無理っぽい? 下手な事すら言えねぇ!!」 「それに首領(しゅりょう)だったら? 馬鹿な俺らより知ってる!?」 また私は驚いた。 ゼスが? あんなに皆がと? 私はゼスを見ながら言う。 「そんなにゼスは恋愛経験があるの? モテるって… 皆が言うぐらいに知ってるの?」 凄く驚いた顔でゼスが言った。 「な、いや、違う!! 待つんだ、ユアナ!? しかも、そんな目で俺を…」 すぐにゼスは… また目を閉じて右手を口元に当てた。 それから急にまた首を振ると。 目を開けて複雑な顔で私を見て言った。 「ユアナ? 急ぐ事もないと俺は言ったが… これは一応かぁ? 一般常識としてになる? それを相当… ユアナにと判り易く言うと… そう言うのはなぁ? 人によって違う。 だから… ずっと一緒に居たいと思える人かぁ? そう思えるなら… まぁ、間違ってねぇと思うが?」 それを聞いて私は考える。 一般常識と? 人によって違うと? でも… ずっと一緒に居たいと思える人と? 私は首を傾げながらも言った。 「ゼスや皆と一緒に居たいけれど… それは違うの?」 ************************** その瞬間。 更にゼスは慌てた。 「ちょっと待て、ユアナ!? それは違う!! 恋愛じゃねぇだろ!? 何かぁ!? ユアナは… 例えばだが!? こんの馬鹿共全員を見ろ? もう、ここに居る馬鹿共で良い!! どう思ってんだ!?」 それを聞いて皆を見ると… 凄く驚いた顔をしてた。 それから私はゼスを見て言う。 「とても楽しいと思うけれど? 皆は優しいでしょう? ゼスも優しいでしょう?」 ゼスは凄く驚いた顔で言った。 「な… えっ、それを!? 本気で… いや、この馬鹿共も優しいと!? 俺もと!?」 不思議に思いながら私は言う。 「でも… ゼスは私を助けてくれたでしょう? 皆も… 私に教えてくれるでしょう? 怒らないで笑ってるよ?」 ゼスは複雑な顔で言った。 「それは… だから恋愛じゃねぇぞ!? 単純に仲間だからだろ? 愛情とかじゃねぇし? 皆で助け合うからだ!! そんなんは普通の事だ!! ユアナなら… 逆にと考えろ?」 すぐに私は逆に考える。 そうなると… 例えば? ゼスが捕まって? 「ゼスがなら、その時は…」 すぐに私は思い出す。 だから首を横に振って下を向いた。 少しゼスから離れる。 「私は… ゼスみたいに強くない。 皆も同じなら… 私は助けられない… あの時も… どうにかゼスを… 皆をと。 言わない様にしか…」 私は何も言えなくなる。 だから首だけを横に振る。 「ユアナ? まさか… 俺らの事をずっと?」 私は下を向いて考える。 それなのに… ここにと? 私が居ても良いの? 誰も助けられないのに… 急に私は引き寄せられてゼスを見た。 複雑な顔で言ってくる。 「良く聞け、ユアナ。 そんな事は力の有る無しは関係ない。 弱いだの、強いだの、皆が違う事だ。 だからこそ皆でと助け合う。 ユアナが俺らを庇うのも違う。 俺は『首領(しゅりょう)』だと。 何度も言ってるだろう。 だから俺がする事だ。 ユアナを、皆を、庇うのが普通だと。 そして『俺が守る事』が当たり前だと。 俺は仲間を見捨てる様なクズにならねぇ… こんなのはユアナだけじゃねぇぞ。 この場に居る皆すら同じ事だからなぁ?」 私は驚く。 それに… 皆を守るのが… 私もと? 皆もと? ゼスが守るのと? それが当たり前と? 私は少し笑って思ったまま言った。 「やっぱりゼスは凄い…」 ゼスも私を離すと少し笑った。 私の頭を撫でながら言う。 「当たり前だろぅが。 今更かよ? こんの仮入団馬鹿!! まだまだ正式には長過ぎるなぁ…」 もう私は凄く嬉しくて笑って言った。 「はい!! もっと頑張ります!!」 少しゼスは驚いた顔をしたけれど。 でも凄く笑い出した。 「あははははは!! もう… どんだけ… 俺は… あはははは!! やべぇ… あはは!! こんなんで? もう笑うしか… あはははははは!! やっぱ… 何も? 判ってねぇ… あははははは!!」 ゼスは笑いながら皆の方に言った。 「おぃ、馬鹿共もだぞぉ!! こんの仮入団馬鹿!! お前ら全員をと? 守ってたらしいからなぁ? しかも、こんなんで? あはははは!! そこだけは、まぁ? お前ら馬鹿共も見習えよぉ!! とんでもねぇ!!」 そう言うと皆も笑った。 「首領(しゅりょう)!! やっぱ、負けてるかも!? もう俺らもだぜ!!」 また嬉しくて私も笑った。 ************************** 毎日、色々な事があるけれど。 私は学びながらと少しずつ日数は経つ中でも… いつも私はゼスと一緒に居た。 それに皆は交代制で動いてるのも判った。 でも私は不思議に思う。 ゼスだけが違う? ゼスは… いつも書類関係を読んでる? 皆にと指示をしてる? ゼスだけ? 首領(しゅりょう)だからと? 今日もゼスは部屋にした場所でと… 一人で椅子に座って読んでたけれど。 私も無事に部屋の掃除や言われた事をと。 全て終わらせたのもある。 少し私はゼスが気にもなる… 判らない… 聞いてみようと思って側に近付いて言う。 「ゼス? 少しだけ聞いても大丈夫?」 書類みたいなのを机に置いてからゼスは笑って言う。 「また判らねぇのかぁ? 今度は何だ?」 私は首を少し傾げながらゼスを見る。 「ゼスは… いつも? 何を読んでるの? それに… 皆とも違うのは… 首領(しゅりょう)だからなの? でも…」 なぜか私は言葉が浮かばない。 だからゼスを良く見る。 私とも少し違う… 濃い赤みのある髪色。 瞳の色も似てる濃いヴァイオレット。 お兄様達にも似た体付き… けれど違う… 私にと、その笑顔も… 「ん? ユアナ? 俺が違う理由と? これは報告で… 簡単に言うなら情報をだが… んん?」 今度は複雑な顔になったゼスを私は見た。 報告と? 情報をと? でも… ゼスは私も、皆も、守るなら… 「多分? ゼスは皆より強いと思うけれど… どうしてゼスは…」 やっぱり言葉が判らない。 だから、どうしてもゼスを見てしまう。 「ユアナ… んん? まぁ、俺は独学でとかぁ? 大抵の武器も使えるが… ん、どうした? ユアナ?」 独学と? 大抵の武器と? だったら… やっぱり強いの? どうにか私は言葉を探して言う。 「ゼスは… どうして違うの? 判らないけれど。 優しいのに… 盗賊にと? それに…」 ゼスが少し焦りながら言う。 「ユ、ユアナ? いや、俺を… そんなに見られても? だが、ん? 何が判らないと?」 何が… 「そう… 何かが判らないの… だからゼスは…」 私は首を傾げながらもゼスにと。 ゼスの頬にと手を伸ばした。 どうしても判らなくてゼスにと触れる。 更に焦りながらゼスは言う。 「ユアナ!? な、え、どうした!? 俺に!? ん、いや、俺は… どうすれば!? ユアナ? 俺からは動けん!? だが…」 ゼスからは動けないと? 私はゼスを見ながら考える。 判らないけれど… ゼスは動かないならと私は少し擦り寄る。 「ユアナ!? いや、待て、な、何を!? 急に、どうした!? えっ!?」 確かにゼスは動かない。 でも… 「ゼスは… 安心する。 いつも笑って教えてくれる。 助けてくれる。 お兄様達とも違う… 不思議な… 優しいのも、そう。 どうして優しいの?」 私は目を閉じてゼスに少しだけ… 擦り寄ると温かいのが判る。 「ユアナ… それは… ん、俺が優しいと? だが、この状態でと!? 俺は… んん!?」 私は考えながら… でも思う事だけを言う。 「ゼスは違う。 嫌な事も… 恐い事も… 痛い事も… 迷う事も… 何もない。 私が困ったり… 失敗しても怒らない。 ずっとゼスに会う前も… 今まで誰も同じ。 同じ目でしか私を見ない。 同じ事しか言われない。 でも優しいのは判るのに… 判らないと言っても私の為だと。 それしか言わないけれど。 でもゼスや、ここに居る皆達だけ。 楽しいと… 嬉しいと… だから、あの時もゼスの言葉をと。 必死で頑張っても… 全て諦めた後も唯一、思った事も… ゼス達は無事に逃げて欲しいと。 もう私の事なら良いからと。 それすら助けてくれたのはゼスと。 ここに居る皆達だけだった。 だからゼスは優しいと…」 やっぱり、そう、ゼスは安心する。 そう思ってた時。 初めてだった。 ゼスが私を抱き締めてきた。 「ユアナ… それを… どれだけ、ずっと… なぁ、ユアナにと。 大切な事を先に言うぞ?」 ゼスは力を緩めて私を支えてくる。 私がゼスを見ると… また初めて見る顔だった。 でも少し複雑に笑ってる? そんなゼスが私にと言ってくる。 「ユアナ? 良いか、必ず覚えるんだ。 俺達は盗賊団でもあるがなぁ? ユアナには難しいかも知れんが。 全ての答えは一つではないと。 これは悪人でも多い事だがなぁ。 本当に好きでしてる悪人だけじゃない。 金を稼ぐ為にと。 何かを守る為にと。 したくなくても生きる為にと。 そんな悪人も居る事だ。」 私は覚える。 全ての答えは一つではないと? 金を稼ぐ為にと。 何かを守る為にと。 したくなくても生きる為にと。 そんな悪人も居ると。 「それは… ゼスもなの?」 ゼスは目を閉じて、そのまま言った。 「ユアナは知らないだろうがな。 貴族だの、身分だの、理不尽な事を… それをする者達は多い。 そんな者達は悪人にとすらされない。 優遇だけされて、簡単に嘘を付いてな。 ただ誤魔化すのみ… だからこそ、全ての答えは一つではない。 そして簡単には決められない事でもある。 それでもと、どうしようもないからこそ。 皆が必死に頑張ってるんだ。」 ゼスは目を開けて嬉しそうに笑った。 「俺はなぁ? そんな悪人とかぁ? それにしかなれずにと… でも、それでもとだ!! どうにかしてる者達をと。 何かを、してやりてぇんだ!! せめて金をと。 俺には、そんぐらいしか出来ん。 金だけでも充分だかんなぁ? 皆が食い物にすら困らねぇし? だから皆が助け合うだけだぞぉ!! これはユアナも同じ事か? ユアナの入団希望は… まぁ… 俺すら!? あん時はスゲェ驚いたが!? だが、簡単だろ? 楽しく笑って生きたいってだけだろ? 良いんじゃねぇの? それが普通だろ!!」 私は驚きながらも『全て』を覚える。 どうにかしてる者達をと? せめて金をと? 皆が食い物にすら困らないと? だから皆が助け合うと? それに… 楽しく笑って生きたいと… 凄く納得したのもあるけれど。 私は… ************************** 「ゼス!! それは私も嬉しい!! こんな事を聞いたのは初めてかも? それに凄く判った!! やっぱりゼスは違う!!」 もう私は凄く嬉しくてゼスにと抱き付いた。 「ユ、ユアナ!? ちょっ、待つんだ!! それだと俺が!? な、これだと…」 もう、ただ私は嬉しい!! だからゼスに抱き付きながら笑って言う。 「私も頑張るよ!! もっと頑張る!! 判らない事ばかりあるけれど!? それでもゼスは凄く優しいのも判る!! こんなにも嬉しい言葉すらも!? もう凄く嬉しい!!」 「ユアナ!? お、落ち着け!? 俺すら、こんなん… いや、根性か!? 判らん!? だが、ユアナ、待つんだ!? 離れないと… こんなん、俺すら危ねぇ? ちょっ… 俺か!? 俺の根性… 俺すら根性と忍耐力…」 その声で少し私も動いてゼスの顔を見ると… なぜか目を閉じて首を横に振ってた。 不思議に思いながら私はゼスから離れて言う。 「ゼス? どうしたの?」 ゼスは目を開けると大きく息を吐き出した。 「あぁ… とんでもねぇ… だが… 俺は勝った…」 そう言うと机に顔を伏せて言った。 「ユアナ… 頼むから自覚してくれ… 俺すら危ねぇ…」 私は判らなくて聞いた。 「ゼス? それは… 何の自覚をするの?」 急にゼスは顔を上げてからだった。 複雑な顔で大きく言った。 「俺も男だぞ!? 今みたいにユアナがと!? あんな事をしたら… ここの馬鹿共なら無理だかんなぁ!! 少しは考えろ!! 俺すら危ねぇだけだろ!!」 私は少し意味に気付いた。 前にも聞いた? 皆すら勘違いをと。 でも… 私は笑ってゼスに言った。 「はい!! でも大丈夫だよ!! ゼスだけは信じられる!! 多分ゼスだけかも? やっぱりゼスだけが違う!! 私も頑張ります!!」 今度はゼスが凄く驚いた顔をした。 「な… 俺だけと? いや、これは…」 急に首を横に振ると… 微妙な顔になって大きく私にと言った。 「こんの… 仮入団馬鹿な上にと… 無自覚馬鹿がぁ!! もう危なっかしぃ!! 俺の身にもなれぇ!?」 私は思う。 やっぱりゼスは優しい!! それに… そう言えば? 私からは初めて? これは… ゼスを見るけれど。 不思議な感覚だった。 でも嬉しくて私は笑う。 そんなゼスも少し笑ってから言う。 「ユアナは笑ってる方がなぁ。 やっぱり良いぞ!! だが、まぁ… とんでもねぇ… でも俺は根性? はぁ…」 それだけ言うとゼスは… また机に顔を伏せた。 ************************** それからもゼスと一緒にと。 私は毎日、楽しいのもある。 それにゼスが言った言葉… 『本当に好きでしてる悪人だけじゃない。』 言葉は全部、覚えてるけれど。 意味までは全部は判らなくても思う。 ゼスが優しい事だけでも充分に判った。 そんな日々の中でも私は学ぶ。 頑張ればゼスが笑う、頭も撫でてくれる。 皆は私には触れない。 私が失敗しても笑って教えてくれる。 それでもゼスが褒めてくれる時。 どうしても私は嬉しくて、たまに抱き付いてしまう。 でもゼスは慌てるだけで周りの皆は笑う。 その時はゼスが必ず言う様になった。 「こんの無自覚馬鹿!! 良い加減に、それも覚えろぉ!!」 どうしても私は嬉しくて笑いながら言う。 「ごめんなさい、ゼス!! でもゼスだけだから大丈夫です!!」 ゼス以外も笑うだけで、そんなゼスは首を横に振る。 「まぁ… ユアナが笑うならと… でも無自覚? 俺が? そんなん、どう教えれば…」 ゼスは目を閉じて口元に右手を当てる。 考えてる時の癖と私も判ってるけれど… その時は私も考える。 ゼスにだけある不思議な感覚。 それだけを考えた…
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加