ーpresentー

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◇  ──本日の夜、いよいよスーパームーンが見ごろを迎えます!  キャスターの喜々とした台詞を聞いて、僕はテレビの電源を切る。今日はいよいよスタージェンムーンが見ごろになる日だ。僕は自前の一眼レフを鞄に入れ、自転車にまたがる。月は少しだけ見えるが、まだ見頃ではないといったところか。見頃になったスタージェンムーンは本当に大きくて、手を伸ばせば届きそうなくらい月が自分と近く感じる。  僕は汗を垂らしながら自転車のペダルを踏んだ。月が少しだけ近づいた気がする。角を曲がって、坂を上って下って、また角を曲がったら大きな病院が見える。美羽が入退院を繰り返していた、僕と美羽の出会いの病院。そしてそのすぐ近くにラベンダーが一面咲いた丘がある。 「丈くん!」  僕は自転車から降りると、先に来ていた桂木さんを呆然と見る。早いね、と言って桂木さんが笑った。  僕は自転車を角に止めると、「桂木さんの方が」と言う。彼女は嬉しそうに笑った。  ラベンダーはすっかり見頃を終えて、暑さにやられているのか少しだけ頼りない。僕は都心はもっと暑いぞー、と心の中で叫びながらラベンダー畑に足を踏み入れた。空は既に満天の星空が広がっている。じっと目を凝らしたら流れ星も見えそうだ。天体観察には最適な空だな。 「最高のコンディションだね」  桂木さんが興奮気味に言う。僕はそうだね、と相槌を打つと鞄から一眼レフを取り出した。レンズを空に向けて、シャッターを切る。乾いたシャッター音が心地よかった。僕がカメラから視線を動かすと、隣でそれを見ていた桂木さんが目をキラキラと輝かせていた。 「一眼レフ? プロだね」 「まぁ、良い写真で残しておきたいから」
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