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4
沢井と最後に会ってから、一週間が経っていた。
あれから何の接触もない。
可哀想だとは思うが、オレにはオレの生活があると辰郎は達観していた。
聡美と夕食のバンバンジーを食べながら、やはり彼女との暮らしが一番の幸せだと感じた。
聡美の手料理は辰郎の胃袋を幸せに満たしてくれる。
もう佐伯朱莉とは完全に関係を切った。
聡美との時間こそがオレの幸せそのものだ。
だが、鼻歌まじりに缶ビールを口にあてた時だった。
玄関のインターフォンが鳴った。聡美がはーいと余所行きの声で向かう。
ほどなくして、不安な表情でリビングに戻ってきた。
「タ―君、警察の人が」
「えっ!?」
ビールを噴き出しそうになった。呼吸を整えてから玄関に向かった。
きっと沢井だ。そう思いドアを開くと、知らない男の顔がふたつ並んでいた。
「沼並警察署の者です。武下辰郎さんで間違いないですね」
男たちは刑事だった。眼光はするどく、ひどくぶっきらぼうな態度だ。
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