第一章

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「おい、戻ったぞ」 「何処行ってたんですか!」 「こいつを探してたんだよ」 「なんですか、この怪しい人」 あれから私は土方の後ろをついて歩き、此処までやって来た。 新撰組屯所、そう書かれていた。 本当に、この人は新撰組の人だったんだと今になって思った。 「真白だ。今日から仲間になった」 「はぁ?何を訳の分からないこと言ってるんですか?」 「文句あんのか」 「そりゃそうですよ。こんな素性も分からない人を」 私をそっちのけで土方は誰かと言い合っている。 見た目は優しそうな青年に見えるが、チラッと私を見下ろす目は物凄く冷ややかだ。 私は頭巾を深く被り直し、土方の後ろで一言も発さなかった。 「うるせぇな。別にいいだろうよ。そもそも此処にいる奴らに素性がどうとか求めてるのが間違ってんだよ」 「そりゃそうですけど…」 寄せ集め集団。 此処はそう呼ばれている。 腕が立てば誰でも構わず受け入れていると聞く。 だから、此処にいる人たちはみんな強いはず。 そんな考え事をしていると、青年がひょっこり顔を覗かせた。 バチっと目が合うと青年はさっきとは打って変わり、優しい目をして笑った。 「あれ?脅かしちゃいました?そんなビビらないで下さいよ。仲間なんでしょう?」 「おい、真白。隠れてねぇで出てこい」 私は前へ引き摺り出された。 下を向いているとしゃがみ込んで私の顔を覗いてきた。 「綺麗な目をしていますね。私は沖田総司。これからよろしくお願いしますね」 そう言ってにっこり笑ったが、その笑みは胡散臭く思えた。 さっき、土方と言い合っていた時に向けられたあの冷ややかな目を忘れられない。 「……別に思ってもないこと言わなくても大丈夫」 私がそう言うと土方が後ろで吹き出し、笑いを必死に堪えていた。 すると、青年から笑顔が消え、また冷ややかな目で私を見ていた。 「つまんない」 青年はそう呟いて大きなため息を吐いた。 さっきまでの笑顔が嘘のようだ。 「別によろしくする気もないからさ、僕の目障りになるようなことしないでね」 人が変わったかのようだった。 私が感じていた胡散臭さは間違っていなかった。 そして、小さな舌打ちをしていなくなっていった。
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