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全員でご飯を食べ、それぞれが動き出した頃、私と市村は道場にいた。
周りには他の隊士もいたものの、誰一人として私には話しかけてこない。
「よぉ、鉄之助!!死ぬなよ!」
「まぁ、頑張りなよ〜」
左之助に背中を叩かれ、永倉には肩にポンと手を置かれていた市村。
私たちは端の方でやることにした。
「え?俺、何かされるの?」
「何って?稽古でしょ」
私は市村に竹刀を渡した。
「じゃあ、素振り五百ね」
「うっす!!」
元気よく返事をして、無言で竹刀を上から下へ振っていた。
私はただその姿をじっと見ていた。
私が言えることではないが、刀を振るだけの筋力がないように思う。
だからあの時、私とやっても打ち負けていた。
「ねぇ、刀握ったことないの?」
「え、なんで?」
「筋肉がない。それに手にタコもない。体力もない」
市村は素振りを続けながらも私の問いに答えた。
「全くない訳じゃねぇけど、握らせてもらえなかった」
「握らせてもらえない?」
市村は頷いた。
どうやら市村には兄がいて、その兄も新撰組にいるようだ。
その兄が過保護すぎてまともに刀を触らせてくれなかったようだ。
そんな状態でよく新撰組に入ろうと思ったな、と私は思う。
「市村の兄は市村を死なせたいのか?」
私がそう聞くと市村はぴたりと素振りを止めた。
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