第一章

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「なっ…!?」 「馬鹿にしないで…。私、貴方より強いから」 沖田が目を丸くし、驚きを隠せないでいたが、私は突きつけた鞘を下ろし、また土方の横に戻った。 「だとよ。これで異論はねぇな!」 誰も言葉を発さなかった。 馬鹿にされるのは嫌い。 女だから、何? 弱い方が負けるの。 そして、死ぬの。 私はまだ死にたくない。 「近藤さん、あんたも見たろ」 「あ、あぁ……。正直、驚いたよ」 「これで誰にも文句は言わせねぇ。真白、行くぞ」 静まり返った部屋を私たちはあとにした。 「お前、やるな」 「何が?」 「総司が全く反応出来ねぇなんてないぞ」 土方はくっくっくと笑いながら私を見ていた。 その言葉に私は嬉しかった。 褒められるなんて中々ないから。 「一つ、教えといてやる。此処で刀は抜くな。仲間同士の私闘も禁止だ」 「じゃあ、私はどうやって身を守るの?」 「それは別だ。そもそも、お前に何か変なことをしようとする奴は武士でもなんでもねぇ。容赦なく殺せ」 私は頷いた。 その後、何点か注意事項を言われた。 新撰組から抜け出さないこと、勝手に金策をしないこと、武士らしからぬことをしないこと、とか。 私にはあまり意味のないことばかりだった。 「それより、お前、頭巾取ってよかったのか?」 「黙らせるにはこれがいいと思って」 確かに、素性も顔もあまり見えない私をすぐに仲間だとか言われても信じられないところがあると思ったけど、正直、私はどうでもいい。 でも、土方の信用を失うのは違うと思ったから。 折角、拾ってくれたのに迷惑はかけられない。
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