第一章

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「真白ちゃん、遊びましょ」 部屋の外から声が聞こえた。 この声は、沖田。 懲りもせず来たの? 「いいぞ、遊んでこい」 私は頷いて、襖を開けた。 そこにはにっこり笑顔を浮かべている沖田がいた。 「何の用?」 「だから、遊ぼって。君とやり合いたいのさ」 そう言って私を道場へ連れてきた。 そこには斎藤、原田、永倉、藤堂がいた。 「やっと来た。待ちくたびれたぜ」 「真白ちゃんのこともっと知りたくなっちゃってさぁ」 所謂、観客だろう。 私と沖田の手合わせを見るために此処にいる。 「これ、君の」 そう言って手渡された一本の竹刀。 軽すぎるその竹刀を私は何度か上から下に振り下ろした。 「これ、持ってて」 「え、俺が!?」 私は二本の刀を藤堂に手渡した。 刀がない分、体が軽い。 私は沖田の正面に立った。 「俺が審判をやろう」 そう名乗り出たのは斎藤だった。 誰が審判をやろうと構わない。 私は竹刀を構えた。 私は負けられない。 「始め!」 その言葉と同時に沖田が私へと向かってきた。 男の人の攻撃は真っ正面から受けたら私が負ける。 だから、受け流す。 体を半身に構え、沖田の攻撃を受け流した。 何度、攻撃されようと同じだった。 「君、ホントに強いんだね」 「……殺さなきゃ殺されたから」 息が少しずつ上がっている沖田をよそに、私は動きを最小限にしていた。 「だから、負けられないの」 沖田の攻撃を受け流し、そのまま下から竹刀を振り上げた。 「止め!」 私は沖田の首に竹刀の先を突きつけた。
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