第一章

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「負けたよ。僕の負け。まさか二回も首に突きつけられるとはね」 沖田はため息を吐きながら、どこか悔しそうな表情を浮かべた。 「おいおい、まぐれじゃなかったのかよ」 「やるねぇ〜」 「真白、凄いな!」 私を囲むように原田、永倉、藤堂が来た。 だって、私はまだ死にたくないから。 「これで終わり?なら、戻る」 「お、おい!ちょっと待てって。俺たちともやろうぜ」 え、此処にいる全員と…? あと四人もいる。 でも、出来ないなんて言えない。 やるしかない。 「わかった」 私は一人ずつ相手にした。 「最後は俺だ」 私の息が上がり始めた頃、最後の相手は今日の朝方に会った斎藤だった。 「行くぞ」 私は疲れて震える手できつく竹刀を握った。 斎藤を正面に見据えて、大きく息を吐いた。 私が頷くと、斎藤は真っ正面から斬り込んできた。 最小限の動きに留めないと。 もう膝が笑っていて、まともな勝負にならない。 「邪魔」 私は片手で自分の頭巾を取った。 額からは汗が流れ出ている。 攻撃を受け流し続け、反撃の機会を伺っていた。 息が上がり、手に力が入らなくなってきた。 「あっ…!」 「お前のま___」 「まだ、負けてない!」 私は竹刀を飛ばされたが、同時に斎藤の持っていた竹刀を蹴り飛ばした。 「そこまで。引き分けだな」 審判をやっていた原田に止められた。
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