第一章

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「真白さん、大分此処に慣れてきましたね」 「みんな、いい人」 此処に来て数日が経った。 私は山南さんの元で読み書きを習っている。 午前中のうちは山南さんのところで、午後は土方についていく。 「大分、字も上達してきましたし」 「山南さんのおかげ」 「そうですか。教え甲斐があるというものですよ」 ニコッと笑ってこちらを見る山南さん。 私はこの人に逆らってはいけないことを学んだ。 だから、私はさんを付けて呼ぶ。 「飲み込みが早くて助かります」 「山南さん、教えるの上手」 「褒めてくれるんですか。……今の私にはこのくらいしかできないですからね」 そう言って右腕をさすっていた。 私が来るより前に何かあったらしい。 そして、この人は稽古にも出ていない。 「頑張って覚える」 「はい。頑張りましょうね」 優しく微笑む山南さんに私は頷いた。 そして、私は紙に向き合った。 筆を持ち、ゆっくりと書き出していく。 たくさん、覚えたら褒めてくれるかな。 そんなことを思いながら、私は筆を握っていた。
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