第一章

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「真白、行くぞ」 気付けば、日は高くなっていて私を土方が呼びに来た。 「ありがとう」 「では、また明日」 私は山南さんにお礼を言って部屋を出た。 土方と一緒に向かった先は町だった。 「何かあるの?」 「そりゃお前の物買いに来たんだ」 「私の?必要なものなんてない」 そう言うと土方はため息を吐いた。 そして、とある店へ入った。 「あら、土方はん。そんな可愛い子連れてどないしたん?」 「お鶴、こいつの着物を仕立ててくれねぇか?」 「土方はんの頼みは断れへんの知っとるやろ?」 中にいたお鶴と呼ばれた人はとても綺麗な人だった。 私とは全然違う。 身長も綺麗な声も、顔立ちも何もかもが違った。 「名前は?」 「…真白」 「なら真白はん、その頭巾取ってもええ?」 私は土方を見た。 「お鶴、奥で取ってやってくれねぇか?あと、見た目については何も言うな」 「なら真白はん、奥に行きましょか」 お鶴に手を引かれ、奥へと入った。 布が沢山あった。 「さ、取ってくれる?」 私は言われるままに取った。 お鶴の黒い大きな目がさらに見開かれた。 ただ、土方との約束通り、微笑むだけで何も言わなかった。 「何も隠すほどのものやない。綺麗や」 「……でも、みんなと違う」 「そんなん当たり前やろ?自分と同じ人がいたらびっくりするやろ」 俯いた顔を上げるとお鶴はにっこり笑った。 そして、優しく私の頭を撫でてくれた。 「土方はん!お着物は何着いるん!?」 「二着だ!また何かあれば買いに来る!」 お鶴は大きな声で叫んだ。 それに応えるように土方も大きな声で返事をした。
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