18人が本棚に入れています
本棚に追加
「二着ならええもん買うてもらいなさい」
「でも、私にお金は……」
「そんなん、気にせんでええ。土方はんが払うに決まっとる」
そう言って、お鶴は楽しそうに生地を選び始めた。
私にあれやこれやと合わせながら、色や柄を見ていた。
でも、動きやすいやつがいい。
「あの……」
「ん?」
「私、土方みたいなやつがいい」
「え?でも、真白はん、女の子やろ?」
私は頷いた。
でも、あれじゃ動きにくい。
いざという時に動けなくなる。
「二着とも、あぁいうのがいい。……もし、私がお金もらえるようになったらその時はお鶴が私に選んで?」
「可愛いなぁ、もう!なら今回は袴にしとくわ。絶対、また来てや」
私は頷いた。
そして、私の体周りを採寸して私は土方の元に帰された。
「やっと終わったか」
「なぁ、土方はん。ちゃんと真白はんにお給金、あげたってな」
「当たり前だろ。……邪魔したな」
「なんも、気にせんでええよ。真白はん、急ぎで作ったるから五日後に取りに来てな」
私は頷き、また深く頭巾を被った。
土方は私とまた町を歩き出した。
帰るのかと思いきや、屯所とは別の方向へ。
「土方、待って」
私は建物の陰からこちらへ向けられる殺気を感じた。
周りにいる人はいつもと変わらず笑って喋っている。
私が刀に手をかけようとすると土方は私の腕を引いて止めた。
「どうして?」
「悪いな。試しただけだ。山崎!」
土方が叫ぶと山崎と呼ばれた男が殺気の飛んできた方から出てきた。
町人の格好をしており、刀は持っていなかった。
そして、私と目が合うと笑った。
「悪かったなぁ。でも、嬢ちゃんになら安心して任せられそうや」
「こいつは山崎烝。監察方だ。何かと便利な奴だ」
「副長、そないな言い方はないんちゃいますか?ま、これからよろしゅう」
そう言って山崎は人混みの中に消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!