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結局、あれから一睡も出来ずに、朝を迎えた。
そして、土方に連れられ、向かった先は台所だった。
「源さん!一人分多く作ってくれ」
「あいよ。随分可愛い子を連れてきたじゃないか」
源さんと呼ばれる人は此処にはあまり馴染まなさそうな優しい笑顔をする人だった。
ぺこりと少し頭を下げ、土方についていった。
そして、足早に次の場所へと連れてこられた。
「近藤さん、入るぞ」
「おお、トシ!連れてきたか」
近藤さんと呼ばれた人も、さっきの人に負けず、どこか優しい笑顔を向けてくれた。
土方の方をチラッと見ると頷いた。
この人が新撰組局長、近藤勇なんだ。
私は深く被っていた頭巾を取った。
「昨日、土方から真白の名前をもらっ……もらいました」
「気を遣わなくて結構!自分の思うように喋ってくれて構わないぞ!……それにしても、珍しいな」
私の容姿を見てそう言った。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
「真白か。トシにしてはいい名前を付けたじゃないか」
「うるせぇ。こいつにはぴったりな名前だろ」
「で、トシがわざわざ連れてきたからにはなんかあるんだろう?」
「あぁ。俺の小姓にする」
私は首を傾げた。
「真白、君はそれでいいのかい」
近藤さん、は私の目を真っ直ぐに見てそれを聞いてきた。
小姓が何か、何をするのか私には分からないし、それでも私を拾って昨日の今日でここまでしてくれた人に何も返さない訳にはいかない。
私は土方の方を見上げた。
土方はフッと笑ってこっちを見た。
「いい。私は土方についていく」
「そうか。なら今日から君はトシの小姓だ」
私は頷いた。
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