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この光景に、ヴィクトリアはふたつのショックをうけた。
ひとつは、かっこいいイケメン司書の女房が、くせ毛の天然パーマのロン毛――しかも赤毛――で、ナショナル・フットボール・リーグのディフェンス・バックのごとく、巨体で筋骨隆りゅうだったこと。六フィートはあるイケメンも、その女房のそばでは、ジェナ・エルフマンに肩を抱かれたトム・クルーズみたいな見映えだ。
もうひとつは、女房に浮気がバレたからこそ、痛めつけられたであろうイケメン司書の顔からわかる。すでにかれは、ジャネットといい仲になっていたのだ。
……じつはというと、ヴィクトリアはこのイケメン司書にちょっと気があった。あわよくば? なにかきっかけがあって? むこうからいい寄ってきたら? もしもそういうことでもあれば、即座にオーケーと応えてもいい心構えだけは密かに持っていた。
”縁は異なもの味なもの”と、イケメン司書夫婦の驚愕の婚姻関係のさまを見、さきを越されたではないが、忸怩たる嫉妬の念を湧きおこさせる、ジャネットとオーランド・ブルーム似のイケメン司書がデキていたという事実が、ヴィクトリアの思考を停止させた。――が、オーランド・ブルームの女房が、ジャネットに対しておこなった報復行為。最大級の非難として、うちの、my preciousssをたぶらかした相手に、生たまごを投げつけた情景が、ヴィクトリアが、いまほんとうに考えなければならないことを思い出させた。
この女房が生たまごを持っていた? それじゃいままでのことは? ぜんぶ、この女の仕業だったの?
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