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そこにいましも、イケメン司書の女房の頭の上で、たまごのしろみと黄身が飛び散った。女房は、頭からしろみと黄身を垂らしながら、ジャネットといっしょになって口をぱくぱくさせだした。
なぜ? と、ヴィクトリアは混乱する。頭のなかで、エクスクラメーションマークとクエスチョンマークが交互にいり乱れる。
そこにいましももた、しろみと黄身が頭の上で飛び散った。顔を腫らしたオーランド・ブルームと、ジャネットの亭主の頭の上でだった。ヴィクトリアの見るまえで、四人ともが、額から、たまごのなかみを垂らしながら、口をぱくぱくしている。
生たまごを持っていた女に、生たまごが投げつけられた。この大女房が、さいぜんから、亭主の不貞にとち狂い、見境もなしに、エッグハント会場にいる人たちにむかってたまごを投げつけていた犯人だと思ったのに、その犯人に対して生たまごがぶつけられた。
ヴィクトリアは身がすくみ、その場で立ちつくした。首だけ動かして、警官らのいるところに目をもどす。こちらも犯人と目星をつけていた、ヘンリー以下不良どもは、別件で警官に捕まって、屋台の前の、立て看板が倒れているところで、体をねじ伏せられている。
ほんとうに、誰なの? こんなことをしているのは……?
呆然と立ちつくしているヴィクトリアの姿に、ヘンリー・バワーズたちをお縄にしたところの、警官のひとりが顔をむけていた。
芝地で立ちすくむヴィクトリアの姿と、その奥に、ジャネットと、彼女の不貞を知らない夫と、ジャネットの誘惑に負けて不貞を働いたオーランド・ブルームと、その不貞を働いた夫に怒りの鉄拳制裁をしたであろう大女房が、頭からしろみと黄身にまみれている様子を見て、不審に感じたようだ。警官の顔の表情は、どう見ても、なんてこったい!? といっていた。不良どもを同僚にあずけると、その警官は駆け足でむかってきた。「ミセス? どうかされましたか――」
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