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「ロレッタ様、ご無事だったのですね!私は…私は…」
ジョンは申し訳なさそうに涙を流すと、剣を地面に下ろした。
「ジョン様?」
ロレッタはジョンの様子に戸惑いを見せる、するとフレッドがジョンに近づいた。
「私達はこの国を助けたいとアルゴラから来た。今の現状とこれまでの経緯を詳しく教えてもらえないか?」
「あなたは一体…なぜロレッタ様と」
フレッドはロレッタを自分の元に呼ぶとグッと引き寄せて体に近づける。
そして牽制するようにジョンを見つめた。
「ロレッタは私の婚約者だ。もう契りも交わしている。いいか、私のものだ!」
「え?ええっと…」
ジョンはさらに戸惑い助けを求めるようにロレッタ様を見た。
「フレッド様はアルゴラ国の王子です。この度コスリガが大変な状況なのを知りアルゴラ国の国王の命によりこの国を助けに来てくれたのです」
「アルゴラ国が?なぜコスリガに?何もメリットなど無いのに…」
「それは、ここがロレッタの生まれた国だったからだ。彼女の悲しむ顔はこれ以上見たくない」
ジョンが信じられない思いでロレッタ様を見ると彼女は頬を染めてフレッドに寄り添った。
「ロレッタ様、よかった…そちらでご自分の居場所を見つけたのですね」
ジョンの言葉にロレッタは嬉しそうに頷く。
「はい、彼の隣が私の居場所です」
「ロレッタ様の幸せそうなお姿を見れてよかったです。もう大丈夫ですからその方とお帰り下さい」
「え?」
ジョンの言葉にロレッタは驚いた、それはフレッドも同じだった。
「何故だ?私達の助けは要らないと?」
フレッドは不機嫌そうに聞き返す。
「いえ、この国はロレッタ様を見捨てたのです。隣国に売ったのです!王子の横暴とはいえ、誰もそれに逆らえませんでした。それを今更助けてなどと口が裂けても言えません。ですからこのままどうかアルゴラ国でお幸せに…」
ジョンはすまなそうに首を振った。
「ジョン様…」
ロレッタはなんと声をかければいいのかと手を伸ばすが力なく下げる。
するとその手をフレッドが握りしめた。
そしてロレッタを見つめて微笑む…その顔はロレッタの事をわかっていると言っていた。
「ロレッタの為にこの国をどうにかしないといけないんだ。それが本当の幸せにすると言う事をだからな」
「本当の幸せ?」
「お前の事は知らないが…ロレッタの事を少しは知っているようならわかるだろ。ロレッタがどんな事を望んでいるかくらい」
「しかし、あんな扱いをされてもまだこの国の事を思ってくださるのですか?」
ジョンはロレッタの本当の気持ちを聞きたかった。
「私はこの国に売られたとは思っていません。王子と妹…そして国王に。国とは王族だけでは成り立ちません。国民やそれを守る人達皆がいてこその国です。私が助けたいのはそういう人達です」
「そういう事だ、私はそんなロレッタの思いに応えたいと来た。さぁ分かったら話してもらおうか!」
フレッドはグイッとジョンに詰め寄ると低い声で呟いた…
「ロレッタとお前の関係を」
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