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「いいんですか?行かせて」
シドはフレッドの顔色をうかがう。
「心配だが、ロレッタのしたい事をさせてやりたい…その為のフォローなら喜んでしてやる」
そういうと兵士に目配せをする。
兵士は無言で頷きロレッタの後に続いた。
ロレッタは床にへたり込む人達に一人一人声をかけていく。
傷ついた人のケアはロレッタに任せてフレッドはジョンに話を聞く為に奥の部屋へと向かった。
部屋に入るなりジョンはフレッドに頭を下げた。
「あらためてお礼を言わせて下さい、ロレッタ様を救っていただきありがとうございます」
フレッドは頭を下げるジョンを複雑な気持ちで見つめる。
「それは…なんの礼だ?あなたにお礼を言われるような事をした覚えはない。それとも何か、ジョン、君はロレッタとはそのような関係だったとでも言うのか?」
フレッドの言葉にジョンは一瞬呆けた顔をして固まった。
フレッドの言葉の意味を理解出来ずに頭の中で考えているようだった。
「そのような…関係?」
呟いて見るがピンと来ていないようだった。
「じれったい!君とロレッタは男女の関係だったのか!?」
「男女、まさかそのような関係とは…男と女として…と言う事で?」
「先程からそう言っているが?」
フレッドはとぼけるジョンにイラつきだす。
そうならそうとハッキリと言って欲しかった…言われたところでロレッタを返す気はサラサラないと宣言するつもりだった。
しかし、フレッドの思惑とは違った返答が返ってきた。
「私とロレッタ様が、男女の関係…いえ!そのようなことは絶対に有り得ません」
ジョンは全力で否定してきた。
「本当か…」
怪しむフレッドはジョンの様子を凝視する。嘘をついているか見破ろうとしていた。
しかしその顔は嘘をついているようには見えなかった。
「本当です、私は…ロレッタ様を救えなかった事をずっと後悔していました。私の護衛対象の1番に優先する方はジョージだったのです。ロレッタ様はその対象にも入ってはおりませんでした…王子の婚約者にも関わらず…私は1番間近でお二人の関係を見てきました。あのジョージがロレッタ様の妹と関係を持つところまで…」
ジョンはその時の事を話しながら苦々しい顔をする。
あの馬鹿二人ならやりそうだ。
フレッドはその時の事を考える、自分がその場に行けるならすぐにそんな場所から連れ去ってやるのに…
「ロレッタ様と妹のレミリアの事はすぐに国王に報告致しました…しかし返ってきた答えは王子なら女の1人や2人抱えてて当たり前だと…」
今更ながら滅んでよかったと心底思う。
「で、あなたはどうしたんだ?」
フレッドはジョンに話の続きを促した。
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