散文 戒め

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戒めろ 楽しい時ほど心に枷をかけろ その時間は長くは続かないのだと己を呪え 人のように振る舞ったところでどうせうまくはいかないのだ 常人が瑣末と切り捨てるような ほんの少しの痛みさえ耐えられないのだから お前が人の幸せを享受することなどできない 甘露な幸福に舌を痺れさせている時ほど 訪れる痛みは想像を絶する お前のそれは全てまやかしだ 心が感覚を失い 両の眼は曇り 脳が動くのをやめている時 お前は驚くほどの祝福で満たされている 目を覚ませ 己を呪え 現実だとしても溺れてしまうというのなら 夢としてどうか切り捨ててくれ 傷つきたくない 傷つきたくないんだよ 平坦で無味乾燥した砂を噛んで生きていたい 生まれてきてよかったなんて今更 そんなものはないとわかっているのに 何かの拍子に崩れ去ってしまう砂の城を抱きしめて泣くなんてことは もうしたくないんだ
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