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葵はそう言うとニヤッと不敵に笑い、私に口付けをした。
言葉や態度とは裏腹に、優しく優しく…
そしてゆっくり私を押し倒すと、深く深く口付ける…
その口付けは、罪の味。
葵が優しく私を翻弄する度、私は罪を重ねる。
葵が私を求める度、私は罪が深くなる。
けれどこの瞬間、今だけは、私が葵を独り占める唯一の時間。
罪でも良い、偽りでも良い、葵が私だけを求める唯一の時間。
気紛れな葵に翻弄される時間は、私が唯一女として目覚める時間。
こんなの愛じゃない。
汚れていくいくのは、身体だけじゃない。
本当に穢れていくのは、心…
分かってる。
分かってるけど、今はこの偽りの海に溺れていたい。
葵の周りにどれだけオンナがいるのかは分からない。
今の葵にとって、誰が本命なのかも分からない。
誰かを傷付けることになると分かってはいる。
分かってはいるけれど、罪深い私は、罪の味を知った私は、もう後戻りは出来ない。
この瞬間、私はそう思ってた。
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