濫觴

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「そ、そんな! アタシたちが何をしたっていうんですか!?」  クラスで一番オシャレな美容女子の愛子が涙を浮かべながら叫ぶ。  その声に我に返ると、教室には僕を含めて五人の生徒が席に座っていた。 「ふふふ。そうではありません、何もしなかったんですよ? 担任の加藤先生も嘆かれていましたねぇ。でも、ダメだなぁ加藤先生は、せっかく私がお手本を見せてあげようというのに」  そうだ! 加藤先生は!?  老人は薄気味悪い微笑みを浮かべながら、冷たい目線を教室の後ろに向けた。  急いで振り返ると、加藤先生は椅子に座らされていて、目を閉ざして手足は脱力し口元から涎を垂らしたまま俯いて動かない。  まさか、……もう既に死んでいるのか?  美人で優しい先生だったっていうのに……。  この老人、人を殺すことに戸惑いや罪の意識を感じないのか? 「まぁいいでしょう。さて、やるべき時にやるべきことをしない。そんなことでは社会に出ていけませんねぇ」 「ふざけんな! そんなこと俺たちの自由だろうが!」  クラスで一番の不良で食いしん坊の郁夫が立ち上がり叫ぶと、クラスで一番大人しくリスが好きな右京も同調した。 「そ、そうだよ! こんなの、じ、人権侵害だよ!」 「ほほぉう。難しい言葉を知っている様ですねぇ。これは立派立派。  しかしね、自由や権利というものは一見誰しもに平等に与えられているものの様ですが、実社会に於いては義務や責務を履行して初めて手にすることができるものなのです。あなたたちはそれをタダで享受しようとしている。  いけませんねぇ。それは社会では通りません。ですから、この私自らこうして教壇に立っているんですよ。ふふふ、昔を思い出して血がたぎりますねぇ」  老人の顔にはずっと笑顔が張り付いている。  何だこの鳥肌が立つ様な不気味な微笑みは。  一体何を企んでいるんだ。 「うぅ、そんなぁ。明日から夏休みだっていうのに……」  クラス一の美少女だけど怖がりな絵里香が美しい涙を流す。 「泣き落としは通用しませんよ。ですが、まぁいいでしょう。それではこうしましょうか。これから私が出す問題に答えられれば罰を軽くしてあげましょう。ただし、答えられなければその時は……分かりますね? 夏休みを楽しむことはできなくなるでしょうねぇ」  空気が凍りつく。  答えられなかったら、何をされるというんだ。  あの老人の目つき。  僕には分かる。  今までにも平気で何人も殺していそうな目つきだ。 「そんな……、まさか本当にデスゲームですか……?」  僕が声にならない声で叫ぶと、老人は冷血な爬虫類の様な微笑みを浮かべた。 「ふむ、デスゲームですか。……なるほど、君たちにとってはそうかもしれませんねぇ。よろしい! それでは楽しい楽しいデスゲームを始めましょう」
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