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真相
「加藤先生、今日もあの五人は宿題をしてこなかったみたいですねぇ」
若い女に老人が話しかける。
「あら校長先生、すみません、私もいつも言い聞かせているんですが……」
「そうですねぇ、このままじゃいけませんねぇ。明日から夏休みですし、ここは一度私自ら厳しく指導しましょう。赴任したばかりで生徒ともまだ碌に顔合わせもできていませんからねぇ。久しぶりに教壇に立つと思うと血がたぎりますねぇ」
「校長先生の以前の学校での楽しい授業の伝説は私も聞き及んでいますよ。笑顔でにこにことクイズを挟んで生徒の興味を惹きつけるとか。私も見習いたいですわ」
「ふふふ、昔の話ですよ。でもそうですねぇ、宜しければ加藤先生もご一緒にどうですかぁ? 教室の後ろで座っていてください。では、今日の終業式が終わって、職員会議の終わった夕方頃から始めましょうかねぇ」
「えぇ、愛子ちゃんは絵里香ちゃんといつも教室で遅くまで雑誌を読んでいますし、郁夫くんと右京くんは正反対の二人ですが仲が良くて、時間を忘れて話し込んでいます。治くんは夜更かしをしていつも居眠りが多くて、きっと終業式が終わったのにも気が付かず眠っていると思いますから、ちょうどいいですね」
「ではそうしましょう。うーん、ただ補習をするだけではつまらないですし、せっかくだから生徒たちにもチャンスをあげましょうかねぇ。子供というのは集中力が長く続きませんからねぇ、時々クイズや冗談を混じえて好奇心を刺激して授業に引き込むわけです。それが小学校教諭のポイントです。クイズに答えられればお咎めなしということでどうでしょう?」
「それは素晴らしい! きっと生徒たちも喜びますわ!」
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