濫觴

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濫觴

「…………ここは、どこだ?」  眠りから覚めたばかりで頭が朦朧として思考がまとまらない。  ずれた眼鏡をかけ直して周囲を見渡す。  見覚えのある光景、そうだ、ここは……僕の教室だ。  終業式が終わって、明日から夏休みだった筈。  窓の外はもう日が落ちていて、夜の帷も下りてきている。  まるで夜更かしした翌日の様に眠い。  まさか睡眠薬でも飲まされたのか。  どうして僕はこんなところで寝てしまっていたんだろう。 「初めましてみなさん。さぁて、突然ですがこれから出す問題に答えられなければ、あなた達にはきつぅーいきつぅーいお仕置きを受けてもらいます」  唐突に、見慣れない顔の老人が教壇で不気味な口上を述べる。  誰だこの男は?  不審者か?  夏だと言うのにベージュのスーツを着て身なりは整っているのが逆に怪しい。  笑顔を取り繕っているが、腹の底では何を考えているのか分からない、そういう卑しい笑いを浮かべていた。  そうだ、昨日夜更かしをして読んだデスゲームの始まりにそっくりだ……。  
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