32人が本棚に入れています
本棚に追加
無事に式を終え、ほっと胸を撫で下ろした結愛は、美智子と共に会場となっていた講堂を後にした。
不意に結愛が美智子に視線を向けると、美智子は結愛に優しい眼差しを向けていた。
校門を出たところで、結愛が足を止めた。
「嘘――」
そこには、スーツ姿の康史が笑顔で立っていた。
「結愛、入学おめでとう。新入生代表の挨拶格好よかったよ!」
みるみるうちに、結愛の表情に喜びの感情が溢れ出した。
「康ちゃん――」
結愛は人目も憚らず康史の胸に飛び込んだ。
「もう……結愛ったら、高校生になったっていうのにちっとも変わらないんだから」
美智子は呆れ顔で続ける。
「結愛? 今日康ちゃん、仕事休んで来てくれたのよ。大阪からわざわざ」
「康ちゃんありがとう!!」
結愛は康史の胸に顎をつけたまま康史の顔を見上げ、にんまり微笑んだ。
それからも、折に触れ康史は赴任先の大阪から駆けつけた。
すぐに飛んできてやる――あれはただの放言ではなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!