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案の定、その年の暮れに帰ってきた康史が、彼女らしき人を連れているのを見かけた。
いつかこんな日が訪れることはわかっていた。何も不思議なことではなく、当然のことだろう。実家に連れてきたということは、恐らくそういうことなのだろう、と結愛は理解した。
康史からは定期的にメールが届いたが、今まで頻繁に送っていた結愛からのメールは控えるようにした。結愛なりの配慮のつもりだった。
しばらくすると、康史からのメールはぱったり途絶えた。
これが答えなのだろう、と結愛は感じ取った。
結愛が高校二年の冬のことだった。
三年に進級すると、結愛は受験勉強に明け暮れた。
康史からは時々様子窺いの連絡があり、実家に戻った時は必ず顔を見せてくれていたが、康史の顔を見る度に彼女のことが頭を掠め、複雑な気持ちになった。
そうこうしているうちに、結愛は大学生になった。
そして結愛が二回生になるこの春に、康史はやっと東京へ戻ってくることになった。
しかし、実家には戻らず近くで独り暮らしをするという話だった。
あの人と暮らすのだろうか。
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