初恋の人

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「いってぇなぁ! 何すんだよ!」 太一が睨み付けた。 「今のは俺からだ」 男はそう言うと、さらに力を込めてもう一発殴った。 「――それは、結愛の親父さんからだ!」 結愛はその横顔を見て息を呑んだ。 「――こ、康ちゃん!?」 その名前を聞いて、太一が結愛に視線を向けた。 「え? 康ちゃんって――お前、もしかしてこのおっさんのこと、ずっと好きだったわけ?」 「そうだよ! この気持ちは太一君には一生わからないよ!!」 結愛が泣き叫んだ。 「結愛には二度と近付くな」 康史は太一の胸ぐらをもう一度掴むと自分の方へ引き寄せ、威嚇するような低い声で言った後、勢いよく突き放した。 太一は結愛を振り返りもせず、切れた口元を押さえながら黙って去った。 康史は素早く助手席のドアを開け、「乗って」と結愛を促した。康史も乗り込むと、車を道路脇に停車させ結愛の顔を覗き込んだ。 「痛かっただろ。可哀想に……」 そう言って、結愛の左頬に優しく触れた。
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