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悪いことは続くものなのだろうか。
その年の暮れに、結愛の父、春樹が事故で亡くなった。
その日の夜、康史が高岡家を弔問に訪れた。憔悴していた美智子だが、気丈に振る舞い「遠いところからよく来てくれたわね」と康史を迎え入れた。
遺体の枕元に座り美智子が白布をとると、「春樹さん……」と康史は遺体にすがって嗚咽した。美智子は康史のそばに寄り「ありがとうね」と背中を擦った。
しばらくすると美智子は「お茶淹れるわね」とキッチンへと姿を消した。
康史が立ち上がると、黙って後ろで座っていた結愛と目が合った。結愛の表情は悲しみに覆われていた。
「結愛――」
康史が覆い被さるように結愛を抱き締めると、結愛は康史の腕の中で啜り泣いた。
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