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通夜と葬儀は滞りなく執り行われた。
葬儀が終わると、康史は美智子に声を掛けた。
「俺、大阪に戻らないといけないのでこれで失礼します」
「本当にありがとうね。体に気を付けて仕事頑張ってね」
「俺に何か出来ることがあれば、いつでも連絡してください」
そう言って、康史は連絡先が書かれたメモを美智子に手渡した。そしてそばにいた結愛に近付くと、結愛を自分の胸に引き寄せた。
「一番辛い時にそばにいてやれなくてごめんな」
康史はそう言って、葬儀場を後にした。
帰らないでほしい、本当はそう言いたかったが、康史の泣き腫らした目を見て、結愛は言葉を呑み込んだのだった。
その夜、康史からメールが届いた。
『何かあったら、いつでも連絡しておいで』
再び結愛の頬を涙が伝った。
数日間、結愛は美智子と色々な話をし、そして二人で涙を流した。泣いても泣いても泣ききれず、止めどなく涙が溢れ出た。
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