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一月程経ったある日の夜、ベッドに入った結愛は康史に電話をかけた。
一度のコールで繋がった。
「どうした? 何かあった?」
結愛は口籠った。
ただ康史の声が聞きたかっただけだった。
「明日、そっちに行くよ」
「え?」
結愛はまだ何も話していない。
「明日行くから、今日はもう寝ろ」
電話をかけたのは結愛だが、一方的に康史にそう言われ電話を切った。
だがその夜、結愛は久しぶりに安心して眠れた。
翌日昼前にインターホンが鳴り、結愛がドアを開けると康史が立っていた。
「――あら、康ちゃん!?」
結愛の後ろを着いてきていた美智子が驚いている。
「こんにちは。突然すみません」
「康ちゃんが来ることわかってたら、お昼用意しといたのに……」
美智子が申し訳なさそうに言った。
「いえ、あの……結愛、お借りしてもいいですか? ちょっと出かけてきます」
「ええ、どうぞ。気分転換になると思うわ。ありがとうね」
康史は手土産を美智子に渡すと、結愛を連れ出し近くの海岸までやってきた。
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