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「康ちゃんごめんね。せっかくの休みなのに」
「せっかくの休みだから来たんだよ。結愛、ちゃんと食べてるかい?」
「うん。食べてるよ」
「学校は?」
「ちゃんと行ってるよ」
「美智子さんはどう?」
「ママは……」
結愛は少し言い淀んでから続けた。
「少し落ち着いたかな。ママ、本当に毎日泣いてばっかりだったの。私まで泣いちゃうと、ママがもっと悲しんじゃうと思うから、なるべくママの前では泣かないようにしてるよ。早く立ち直らないとね」
気丈に振る舞う結愛を見て、康史は言った。
「結愛? 悲しい時は泣けばいいんだよ。我慢してたら、結愛の悲しみはなくなるのかい?」
結愛は言葉を詰まらせた。
「美智子さんは結愛の母親なんだから、気を遣うことなんてないんだよ。二人で思いっきり泣けばいい。悲しみの感情を表に出すことで、少しずつ心が軽くなっていくんだと思うよ。悲しみが癒えるには時間がかかって当然なんだから。泣きたいだけ泣いてゆっくり受け入れていけばいいんだよ」
堰を切ったように、結愛の目から次々と涙が溢れた。
結愛を見つめる康史の目からも、涙がこぼれ落ちた。
結愛は徐々に春樹の死を受け入れ、日常を取り戻していった。
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