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私は少しだけ頬を緩める。
「どうでしょう? 自分ではあまり変わっていないように思うのですが……でも、まぁ、出会った頃は確かに子供でした。この場所へ来られるのも、夏の休みだけでしたから」
「あの頃は、親御さんに連れられて来ていたんだったね」
私は、コクリと相槌を打つ。
白鳥さんと彼に出会ったのは、15の夏休みだった。
毎年、私は親に連れられて夏休みの数日の間、この地で余暇を過ごしていた。小さな頃は、見知らぬ土地ということもあり、一人で出歩くことは許されなかったのだが、その年は、一人で街の散策をしていた。何故だったのかは覚えていない。親と喧嘩をしたのか、それとも、多少なりとも一人で行動できる程に親離れをしていたのか。
波打ち際に一人佇み、寄せては返す海を見つめていた私に、声をかけて来たのが白鳥さんと彼だった。
「きみ、一人?」
見知らぬ男性たちに、身を固くしていると、私の警戒心を悟ってか、白鳥さんは、笑みを見せた。
「あぁ、急に声をかけてごめんね。きみ、あまり見かけない子だから、心配になっちゃって」
「なんですか?」
棘を纏った声で問い返すが、白鳥さんはそんな私の態度に気分を害することもなく、穏やかな笑みのまま、手を差し出してきた。
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