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私の豹変ぶりに、晴彦さんは目を見開き、ポカンと口を開ける。そんな彼のそばにいつの間にかやって来ていた白鳥さんが、クスクスと可笑そうに笑う。
「無事で良かった。ねぇ、晴彦」
呆然としながら、晴彦さんが私に問い掛けてきた。
「お前、死ぬつもりじゃなかったのか?」
「だから、違うって言ってるじゃないですか」
私の素っ気ない物言いに、自分の勘違いに気がついた晴彦さんは、ジロリと白鳥さんを睨んだ。
「おい、白鳥。どういうことだよ! こいつ、死ぬつもりなんかなかったじゃないか?」
「僕は別に、この子が死ぬかもなんて言ってないだろ。ただ、『あの子、大丈夫かな?』って晴彦に聞いただけじゃないか。それなのに、晴彦が血相を変えて引き返しただけだろ」
飄々とした白鳥さんの言葉に、晴彦さんはギリっと音がしそうなほどに歯噛みした。繋がれたままになっていた手にも力が入り、思わず私の口から声が漏れる。
「痛っ」
「あっ、悪りぃ」
バッと私の手を離し、気まずそうに頭を掻いたその姿は、先ほどまでの威圧などどこにもなく、それどころか少し頼りなげに見えて、どこか可愛らしかった。
私は、思わずプッと吹き出してから、それを誤魔化すように、笑みを深めた。
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