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突然の出会い
人にぶつかった。誰だか分からない。ぶつけた頭を摩って涙目になりながら見上げると、人気アイドルグループ、バイオレットのリーダー、瀬戸まつりだった。名前が女みたいだったから覚えてる。顔は可愛くて、あざとくて女性からは人気。よく「母性本能くすぐられる〜」って聞く。顔可愛いのに高身長ってとこギャップだよな。……って、なんで語ってんだろ。それより謝らないと!
「すみません!怪我なかったですか?」
「いってて…頭がちょうど鎖骨のとこに…」
はーっ、なんかウザい。別に俺がちっちゃい訳じゃない。瀬戸がデカすぎるだけ。自分の考えに、うんうんと頷く。
「それより君も大丈夫?」
「俺は大丈夫です」
ヒリヒリする頭を押さえながら言った。瀬戸は、俺を見下ろして首を傾げた。
「ん〜?」
「な、なんですか…?」
「君Sub?」
突然言い当てられてドキリとする。なんで分かったんだろ…。
それにこの人…見た目に反して威圧感がある。
「……なんでですか?」
「なんかね、ピンときた!何となくだけど相性良さそうだって思ったんだ〜」
「ふーん?」
……ん?今なんて?相性って言った?
テレビで見た時はNormalだって言ってたけど……。
「あの、テレビでNormalって言ってませんでした?」
「テレビ?……あっ!バラしちゃダメなんだった!」
慌ててパッと口を塞いだ。
えぇー…この人大丈夫かな。
「ごめん、内緒にしてくれる?」
「いいよ」
俺が言ってもメリット何もないし。
「さっきのピンと来たって話さ」
「うん」
「ピンと来たってよりは正確には服従させたい…かな?」
頬を赤らめて、照れくさそうにした。
「……え?」
出会って2、3分の人にそれ言う?
……まぁ俺もちょっと思ったけど。それは内緒。
「えーと…俺学校だからこれで!」
慌てて鞄を拾って、走り出してすぐ、
「Stay〈待て〉」
と言われてしまった。
俺は顔も身体も動かすことを出来ずにただ固まった。
Commandを使われると、ゾクリとしたものが背中を駆け抜けた。
「も〜、逃げないで?」
逃げるとかの前に本気で遅刻しそう。
逃げたかったから理由を作ったのは事実だけど。
「Come 〈来い〉」
身体が勝手にクルリと振り返って、瀬戸の方に近づいて行く。
SMってより、オメガバースみたいに本能に近い。
「Kneel〈跪け〉」
ぺたんと座り込んだ。
ゾクゾクして、体に熱を持ち始める。
瀬戸もしゃがみ込んで俺の頭を撫でた。
「Good boy〈いい子〉」
犬みたいな仕打ちだ。頭ではそう思うけれど身体や心は喜ぶ。
「んへぇ」
気がつけば表情筋を緩ませ、デレデレしていた。
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