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ものの数分で再開
出会ったばかりの相手にCommandなんて使っていいのか?
ふと、そんなことを思った。
「ねぇねぇ、学校まで着いて行っていい?」
「ダメ……って、あ!!」
遅刻する!!
慌てて立ち上がって、走り出した。
瀬戸は「待ってよ〜」って言いながらついてきてる。ついてきていいけど騒ぎにならない?
なんとかギリギリ門を潜って、職員室に寄った。
乱れた呼吸を整えて、扉をノックした。
「失礼します。山中先生いらっしゃいますか?」
言うと、ヨボヨボのおじいちゃんが立ち上がって寄ってきた。
「おはよぉ。担任の山中です」
足がプルプルしてる……。
「今井です」
ついておいでと言われて隣を歩く。
「聞いているよ、Subだって?」
「はい」
「まぁクラスの九割がNormalだから安心してね」
ふぉっふぉっふぉ、と楽しそうに笑いながら教室の扉を開けた。
「おはよぉございます。転入生の今井 雪弥くんです」
「初めまして、関西から来ました。今井です」
ペコリと頭を下げる。顔を上げると後ろの方でヒラヒラと手を振っている人がいた。
「おはよー!遅刻しなかった?」
大きな声で言う。
瀬戸だ……。
「おぉ?知り合いかな?なら、瀬戸の隣に座りなさい」
「えっ、あ、はい」
知り合いってか、今朝会っただけだけど。席につくと、ニコニコしながら「雪弥って呼んでいい?」と聞かれる。
「いいよ」
「てか、関西から来たってことは基本関西弁?」
「ううん、標準語」
「なんか喋って?」
「なんかってなんなん?」
聞き返すと、楽しそうにクスクス笑う。
「標準語結構つかれんねんなー」
「まぁそうだろうね。使い慣れてないだろうしさ。……あっ、僕の事は、まつりって呼んで?」
「うん、分かった。…あ、学校ではCommand使わんといてな」
「えぇ!ダメなの?」
「あかんに決まってるやろ」
「うぅ…我慢出来なくなったら?」
「知らん。我慢しぃや」
「じゃあ雪弥が我慢できなくなったら使うね?」
我慢できないとかあるのか…?三大欲求みたいなものって言われたし…我慢できないのかな。
Command使われた時、ゾクゾクして気持ちいいって思っちゃった。
また使って欲しいって思っちゃうかもしれない…。
頭ぐちゃぐちゃになっておかしくなりそう。
山中先生は数学の先生らしく、一時間目は数学で、そのまま授業を始めた。
「〜であるから〜、ー、ーー…今井、これの答えは?」
「3√2です」
「正解。解説すると〜……」
まぁ最初は問題ない。数学苦手だけど…ついてけるかな。
不安になりながら、チラリと左を見ると、意外と真面目に授業を受けていた。
寝てるかと思ってた。ノートも結構取ってるみたい。俺も頑張らないと。
この人に流されずに授業に取り組む。…うん、頑張ろう。俺はそんな決心をした。
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