突然の出会い

1/1
前へ
/34ページ
次へ

突然の出会い

人にぶつかった。誰だか分からない。ぶつけた頭を摩って涙目になりながら見上げると、人気アイドルグループ、バイオレットのリーダー、瀬戸まつりだった。名前が女みたいだったから覚えてる。顔は可愛くて、あざとくて女性からは人気。よく「母性本能くすぐられる〜」って聞く。顔可愛いのに高身長ってとこギャップだよな。……って、なんで語ってんだろ。それより謝らないと! 「すみません!怪我なかったですか?」 「いってて…頭がちょうど鎖骨のとこに…」 はーっ、なんかウザい。別に俺がちっちゃい訳じゃない。瀬戸がデカすぎるだけ。自分の考えに、うんうんと頷く。 「それより君も大丈夫?」 「俺は大丈夫です」 ヒリヒリする頭を押さえながら言った。瀬戸は、俺を見下ろして首を傾げた。 「ん〜?」 「な、なんですか…?」 「君Sub?」 突然言い当てられてドキリとする。なんで分かったんだろ…。 それにこの人…見た目に反して威圧感がある。 「……なんでですか?」 「なんかね、ピンときた!何となくだけど相性良さそうだって思ったんだ〜」 「ふーん?」 ……ん?今なんて?相性って言った? テレビで見た時はNormalだって言ってたけど……。 「あの、テレビでNormalって言ってませんでした?」 「テレビ?……あっ!バラしちゃダメなんだった!」 慌ててパッと口を塞いだ。 えぇー…この人大丈夫かな。 「ごめん、内緒にしてくれる?」 「いいよ」 俺が言ってもメリット何もないし。 「さっきのピンと来たって話さ」 「うん」 「ピンと来たってよりは正確には服従させたい…かな?」 頬を赤らめて、照れくさそうにした。 「……え?」 出会って2、3分の人にそれ言う? ……まぁ俺もちょっと思ったけど。それは内緒。 「えーと…俺学校だからこれで!」 慌てて鞄を拾って、走り出してすぐ、 「Stay〈待て〉」 と言われてしまった。 俺は顔も身体も動かすことを出来ずにただ固まった。 Commandを使われると、ゾクリとしたものが背中を駆け抜けた。 「も〜、逃げないで?」 逃げるとかの前に本気で遅刻しそう。 逃げたかったから理由を作ったのは事実だけど。 「Come 〈来い〉」 身体が勝手にクルリと振り返って、瀬戸の方に近づいて行く。 SMってより、オメガバースみたいに本能に近い。 「Kneel〈跪け〉」 ぺたんと座り込んだ。 ゾクゾクして、体に熱を持ち始める。 瀬戸もしゃがみ込んで俺の頭を撫でた。 「Good boy〈いい子〉」 犬みたいな仕打ちだ。頭ではそう思うけれど身体や心は喜ぶ。 「んへぇ」 気がつけば表情筋を緩ませ、デレデレしていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加