きりとりせん

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息子の爪を切る。 あのころは紙石鹸のように薄かった爪が 今は私の手のなかで、ぱちんと音を立てる。 膝の上でおさまっていた手足は、もうはみ出るほど窮屈で。 指先をじっと見つめて、すうすうと上下する背中が熱い。 日常に溶けていく名もなき時間に 私は黙々と、きりとりせんをひいていく。 積み重ねてきた日々との、小さな決別 なんてタイトルをつけながら。 さようなら、小さかったあなた。 過ぎゆく春が、レースのカーテンを揺らす。 ぱちんと、とんでいったちいさな欠片は 目を凝らしても、もう見あたらなかった。
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